導入事例

大牟田市立病院様 [今検証するシステムの有用性]
動画ネットワークシステムの導入と 透視録画記録装置の有効活用

大牟田市立病院様

要旨:当院では最新動画ネットワークシステムを導入したが、そのメリットは大きい。特に透視録画記録装置は臨床において有効に活用できている。本稿では同システムの特長を述べるとともに、当院での活用事例の効果を示す。

当院は、「良質で高度な医療を提供し、住民に愛される病院を目指します」を基本理念に、急性期対応基幹病院として、有明医療圏で日々頑張っている。

この度、フォトロンM&Eソリューションズ株式会社の動画ネットワークシステムを導入するに至った。そのシステムの中でも、特に有効に活用している「透視録画記録装置」について紹介したい。

※地方独立行政法人大牟田市立病院 中央放射線部長 小西雅之様に執筆いただきました。
月刊新医療2018年1月号からの転載文

導入製品

動画サーバシステムの概要

まず、当院に導入した動画サーバシステムの概要をあげる。

■システム構成

●動画サーバ

●Webサーバ
●ストレージ装置(実効容量:10.9TB)
●バックアップ装置(RDX装置)
●透視録画配信システム:Kada-Rec2(1機)
●動画読影、カテレポート作成用専用クライアント(4式)
 専用クライアントの設置場所:心臓カテーテル室、生理検査室、循環器外来×2
●連携しているシステム
 富士通社 電子カルテシステム SCOPE連携呼び出し(画像・レポート)
 富士フイルムメディカル社 PACS
 リマージュ社 ディスクパブリッシャー
●接続しているモダリティ
 島津製作所社 心臓アンギオ装置:1機
 フィリップス社 頭・腹部アンギオDSA装置:1機
 日本光電工業社 ポリグラフ装置:1機
 ボストンサイエンティフィックジャパン社 IVUS装置:1機
 日立製作所社 超音波診断装置:1機
 GEヘルスケア社 超音波診断装置:1機
 フィリップス社 超音波診断装置:1機

フォトロン社製動画ネットワークシステムの特長

●DICOM動画サーバ

「Kada-Serve」の特長

 
「Kada-Serve」は、アンギオ装置やIVUS、超音波診断装置、CT、MRIなどのDICOMデータを受信し、管理するDICOM動画サーバである。DICOMデータを保存すると同時に、軽量サイズのWindows Media videoファイル形式も自動で作成し、DICOMデータ(原本画像)とWMVデータ(参照画像)の両方で運用できる。
 
その機能を活用することによって、一般的にはそれぞれ設置が必要なWebサーバ、マルチゲートウェイサーバ、レポートサーバを1つのサーバで担うことが可能であり、1台4役のコストパフォーマンスの実現が可能である。
 
また「Kada-Serve」にはネットワーク上の端末で「Kada-View」と同等の操作が行える「Kada-View Web」が搭載されており、「Kada-Serve」に保存されるWindows Media video(WMV)データでHIS/RIS/PACSや電子カルテなどの院内システムとシームレスな連携を実現し、高速配信が難しい古いネットワーク環境においても負担をかけることなく、院内全端末のどこからでも動画像を参照・活用することができる。

●DICOM動画ビューワ

「Kada-View」の特長
 
「Kada-View」は、アンギオ装置やIVUS、超音波診断装置、CT、MRIなどのDICOMデータを、快適に表示するためのDICOMビューワである。直観的な操作性と高速な検索機能を有しており、誰でも簡単に操作でき、快適な環境が実現された。院内の電子カルテ端末等でWeb上にて閲覧する際も全く同じ画面構成になっているため、スタッフの習熟度も早い。
 
また最近のバージョンでは、エコー画像計測(Bモード、mモード、ドップラーモード)も実装しており、医師の簡単な確認や計測に活用できる。
 
加えて、学会などのプレゼンテーション用の画像データ作成を得意とし、非常に簡便に編集、加工した、後さまざまなファイル形式(BMP、JPEG、TIFF、AVI、MPEG4、WMV等)に瞬時に出力することができる。

●心機能解析ソフトウェア

Pie Medical Imaging社のCAAS7シリーズのQCA、LVAを有している。CAAS7は「Kada-View」とシームレスな連携ができる。また、解析した結果は動画サーバ(Kada-Serve)に送信し、検査に追加保存しているため、動画とともに参照できる。

●循環器レポートシステム

「Kada-Report」の特長
 
「Kada-Report」は、最新のFileMakerをベースとしたカテレポートシステムである。カスタマイズも柔軟で、各施設独自のデザイン、フォームを自由に構築することができ、過去データもスピーディに移行できた。
 
作成したレポート結果は、電子カルテシステム上で閲覧することができる。また最新の機能として、
 
●院内のオーダ情報と連携することによるカレンダー形式の心カテ予約表
●術中の看護記録記載、バーコードによる簡便な使用物品登録
●病棟へのお迎え連絡に活用する通知機能
●エコーレポートフォーム標準搭載
●最新のJPCI(NCD)レジストリへの一括転記機能等も有している。

血管造影撮影室
血管造影撮影室

透視像録画/配信システム「Kada-Rec2」の特徴と当院での活用

当院での運用において大きなメリットがあり、本稿で主に紹介したいシステムが「透視像録画/配信システムKada-Rec2」である。
 
その特徴は、
 
●長時間の透視像を高解像にて効率よく圧縮し、患者属性情報とともに保存、管理が行える
●DICOM MWMによる検査情報を付与可能
●参照端末にて画像を簡易操作で検索・閲覧
 (付帯情報として診療科、主治医、術者、診断名、術式を追加して検索が可能)
●収録画像の編集も簡単に行え、プレゼンテーションツールにて再生可能
●収録中の映像をLIVE配信することも可能 ※30秒ほどの遅延あり
 
などである。
 
「Kada-Rec2」は、透視像を高精細に効率よく保存し、迅速に参照ができ、編集も容易で一般的なMP4(H.264)のファイル形式に保存する透視像録画/配信システムであり、当院では主に頭部アンギオの検査・治療に活用している。透視録画記録というと、従来は主にアンギオ装置メーカーが記録用に用意したDVD装置で記録していた。しかし頭部アンギオの場合、周知のとおり大変高精細な透視像の収録を必要とする。
 
また一般の透視像記録装置では512×512へダウンコンバートし記録されているため、医師の要望に応える高精細な画像記録が難しかった。加えて、収録映像も専用フォーマットのため閲覧・編集が難しく、2次利用へのハードルが高かった。
 
「Kada-Rec2」では解像度1920×1080pixelの映像信号を最大4系統同時に取り込むことができ、脳神経血管内治療の記録として必要とされる透視像を全てオリジナルの画質のまま、汎用的な形式(MPEG4(H.264))で記録・保存することができる。
 
一般的な記録装置では日時しか情報がなく、必要な画像を後日閲覧するためには、アナログな手法で検索し多大な手間・時間が必要であった。この点においても「Kada-Rec2」ではDICOM MWMを取得することが可能なため、検索に必要な情報を付与した映像として記録・管理・保管ができ、当院において従来大変手間のかかっていた映像の管理や検索性が向上した。
 
仕組みとしては非常にシンプルである。
 
アンギオ装置より発生する映像信号を2系統(最大4系統の取得可能)同時に取り込み、DICOM MWMや手入力による検査情報を付加し、MPEG4(H.264)形式のファイルを生成する。
 
アンギオ装置のX線曝射と連動して収録が可能であり、学会発表、教育用ビデオ作成、治療経過の記録に必要なだけの映像閲覧・編集作業に活用できる。
 
当院では2系統でアンギオ装置の正面・側面画像収録で使用しているが、DVIの映像信号が発生するものであれば、前述の同内容で記録することができる。活用法としてはERCP症例にて内視鏡画像と透視像の同時収録ファイルを作成することも可能であり、さまざまな応用が可能と思われる。
 
現在の活用としては、記録端末上での収録、再生のみであるが、当院に導入されているフォトロン社動画サーバ「Kada-Serve」との連携により、病院内の電子カルテ端末上でWeb閲覧する機能も有しており、将来的に、院内どこでも閲覧ができるようにすることも視野に入れている。
 
近年では、透視像記録というものは単なる治療経過の記録としてだけではなく、(1)より高度化した治療症例を教育・カンファレンスに活かすため、(2)医療訴訟の証拠画像として、高解像で鮮明な画像を簡便に収録し、2次活用するため、などによる必要性が今後ますます増えていくと予想される。
 
今回の当院での導入、活用事例がそういった現場対応のヒントとなれば幸いである。

病院概要

保険医療機関/地域医療支援病院/地域がん診療連携拠点病院/厚労省臨床研修指定病院/厚労省外国医師等の臨床修練指定病院/災害拠点病院/開放型病院/日本医療機能評価機構認定病院/久留米大学医学部教育関連病院/各学会認定による修練施設/看護学校等実習病院/病床数:350床/救急告示病院(二次)

●中央放射線部・各種装置台数
一般撮影装置(3)移動式透視装置(3)移動式撮影装置(3)乳房撮影装置(1)骨塩定量撮影装置(1)透視撮影装置(3)CT装置(2)MRI装置(1)RI装置(1)Angio装置(1)心カテ装置(1)放射線治療装置(1)

●診療放射線技師数 16 名(再雇用者1名含む)

名称
大牟田市立病院
所在地
福岡県大牟田市宝坂町 2丁目19番地1
法的資格
地方独立行政法人(職員は公務員身分を有しない地方独立行政法人)
全診療(全 30 科)
内科、消化器内科、内視鏡内科、腫瘍内科、血液内科、内分泌・代謝内科、循環器内科、腎臓内科、外科、消化器外科、腫瘍外科、呼吸器外科、血管外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、脳・血管内科、麻酔科、精神科、小児科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線診断科、放射線治療科、病理診断科、救急科

小西雅之(こにし・まさゆき)
● 58年福岡県生まれ。80年京都放射線技術専門学校卒。同年7月より大牟田市立病院入職し、現在に至る。

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