導入事例

広島市立安佐市民病院様 [多機能化および使用領域拡大の実際]
IVR時における透視像保存の有用性と将来展望 ~Kada-Rec2活用の観点から~

広島市立安佐市民病院様

要旨:近年、IVR時における治療経過の記録として、透視像の録画・保存が求められている。透視像などの映像を取り込み動画ファイルとして記録することで、長時間の映像の収録とその映像の二次利用を簡単に行うことができるようになる

※広島市立安佐市民病院 放射線技術部 槇元剛祐様に執筆いただきました。月刊新医療2019年1月号からの転載文

導入製品

当院は1980年、広島市中心部より約15km北に離れた場所に6診療科、190床の施設として開院しました。その後、92年10月に17診療科となり、527床まで増築・増床。2018年現在、診療科は32まで増え、広島市北部、広島県北西部、島根県の一部を支える北部地域の基幹病院として、多くの患者様に利用されています。なお、22年4月を目標に、現病院より3km北に新築移転する予定となっています。

血管造影X線診断装置等の概要と透視像・撮影録画装置の変遷

当院では現在、2台の血管造影X線診断装置を保有しています。1台目は循環器専用のPhilips社製「Allura Clarity FD10C」、2台目は多目的に使用できるPhilips社製「 Allura Clarity FD20/15」です。この多目的用装置は17年10月に更新したものであり、脳血管内治療科、放射線診断科、循環器内科、心臓血管外科、整形外科など多数の診療科でフル稼働しています。

私が就職した20年前の透視像・撮影録画媒体は、まだVHSのビデオテープでした。全症例、透視像・撮影の別媒体への録画はされておらず、たまに気になる症例のみ録画していたように記憶しています。現在普及しているポータブルHDDやUSBなどの製品も、もちろん当時はありませんでした。また、循環器用の血管撮影装置はシネフィルムを使用しており、フィルムは現像するために外部発注していました。多目的用の血管造影X線診断装置(I.I型のバイプレーン)も同様であり、たまにVHSのビデオテープで録画されているという状況でした。

その後、現在使用している循環器用装置への更新があり、その時に初めて全症例の透視像・撮影録画装置としてSony社製のメディカルレコーダーが導入されました。これにより、X線曝射と連動して透視像・撮影も録画することができるようになり、かつ外部メディアで画像を取り出すことも可能となりました。同画像は、学会発表や教育用ビデオ作成など多目的に活用されています。

多目的用の血管造影X線診断装置(I.I型バイプレーン)は古いままの録画装置でしたが、2年前にSony社製のメディカルレコーダーを2台導入し、正面・側面用にそれぞれ接続しました。実はこの時に透視像録画配信システム「Kada-Rec2」(フォトロン M&E ソリューションズ社製)の存在は知っており、当時の脳神経外科医師に相談し導入を試みましたが、予算の関係で断念した経緯があります。

「Kada-Rec2」導入の経緯と特長

近年、血管造影X線診断装置は治療目的で使用されることが多く、それに伴い治療経過の記録として、透視像の録画・保存が求められています。「Kada-Rec2」は、透視像などの映像を取り込み、動画ファイルとして記録を行う映像収録システムであり、長時間の映像の収録とその映像の二次利用を簡単に行うことができます。

今回、多目的用の血管造影X線診断装置の更新に際し「Kada-Rec2」を導入しました。タワー型のPCとモニター2面構成であり、図1に示すような配置になりました。

「Kada-Rec2」の特長を以下に記します。

収録を行う映像は、最大解像度1920×1080pixelの映像信号を4系統取り込むことができ、系統ごとに独立して収録映像のファイルを作成し、長時間の高画質・高解像度の映像を効率よく保存します。収録映像に関しては、タイムコードを付加することで映像の編集に役立ちます(図2)。

(左)図1 血管造影室に設置している「Kada-Rec2」(右)図2「Kada-Rec2」画面
(左)図1 血管造影室に設置している「Kada-Rec2」(右)図2「Kada-Rec2」画面

「Kada-Rec2」と機器との接続に関しては、RIS情報をMWMにより血管造影X線診断装置(Allura Clarity FD20/15)に患者情報を送信し、そこからポリグラフと「Kada-Rec2」に枝分かれするような形で患者情報を送信しています(図3、4)。

図3 システム概要図
図3 システム概要図
図4 接続概念図
図4 接続概念図

「Kada-Rec2」により『オーダー取得』し、『検査開始』とすると録画スタンバイの状態になり、X線曝射と連動し透視像・撮影を録画します。そして検査終了後は『検査を閉じる』とするだけの、至ってシンプルな運用です。なお、急患で医師のオーダー入力が間に合わない場合は、手入力で仮のIDと名前を登録すれば、録画可能となります。

運用上の注意点としては、「Kada-Rec2」の『オーダー取得』を実施しなければ録画が開始されないままであることが挙げられます。途中で録画を開始してもそこから録画が始まるため、検査開始時の透視像は録画されません。また、前の患者様の収録画面で『検査を閉じる』としなければ、そのまま続けて録画されてしまうことになります。

なお、当院ではPACSの放射線検査画像を全て保存し年々検査数も増加している関係から、透視像の画像はサーバー未接続の状態です。

システム導入のメリットと運用上の留意点

運用を開始して便利だった点は、血管内治療時のステント、バルーン挿入時や拡張においてデバイス側トラブルの画像検索が容易にできるようになったことです。Sony社製のメディカルレコーダーでは、すぐに画像確認したい場合、早送りや巻き戻しにより画像を探すのに苦労します。これに対して「Kada-Rec2」はX線曝射と連動するため、フットスイッチや撮影ボタンを離すたびに画像ファイルが作成されます。結果、ワークステーション上にサムネイル画面が作成されるので、容易に検索することができます。

録画される画面モニターの前で医師やメーカーが立ち会い、原因について議論することがあり、その際に「Kada-Rec2」のこの機能が非常に役立ちました。また「Kada-Rec2」は医学生や初期研修医、レジデント、コメディカルの教育においても使用され、実際に立ち会った症例において、上級医が治療終了後に「Kada-Rec2」のモニター前でレクチャーする際に活用しています。

さらに収録映像はMPEG4形式で保存でき、Windows・Mac両OSで映像閲覧・編集作業が可能なため、学会や研究目的で使用する場合は、フォーマットしたUSBやDVDなどに必要な透視像を出力して活用できます。その際、画像はSony社製のメディカルレコーダーも併せて画像編集ソフトを用いて患者情報を匿名化した上で運用します。なお、当初は画像編集作業のマニュアルを作成し広範囲に運用することも考えましたが、不慣れな職員が使ってトラブルになることを防ぐため、血管撮影担当の診療放射線技師3人までとしています。

システム設置から1年が経過した現在、保存容量が70%を超えてきたため、バックアップの作成を始めました。当院では、市販のポータブルHDDに検査年月日と患者名のフォルダを作成し保存しています。画像のエクスポートや削除については、必ず認証パスワードが必要なため、確認の意味も含めて便利な機能です。OSはWindowsなので、画像編集や出力に関しては問題なく使えます。

ちなみにバックアップデータは、院内の放射線部門内のサーバー室で管理しています。

運用に関する今後の計画と要望

Allura Clarity FD20/15に付属しているInter-ventional Workspot(以下IW)で透視上に3D画像をオーバーレイできる3Dロードマップや、3D・CT画像を用いて腹部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術(EVAR)、心房細動治療でのカテーテルアブレーションなどを透視像とフュージョンさせIWのモニター上に連動していますが、これらの動画を「Kada-Rec2」に保存できないかを、現在、メーカーと協議中です。IWでも動画保存は可能ですが、放射線部門の画像サーバーに動画を送ると容量が大きすぎるため見送ることにしました。これらの動画を前述のMPEG4形式で保存し、学会や教育目的などで活用できるようになることを期待しています。また、手術室で外科イメージを用いた手術の場合、現状では透視像の保存はされていないので、現在検討中です。

費用対効果は低いかもしれませんが、昨今の医療事故による裁判や患者様に対する医療の透明性提示を考えると、透視像の動画保存は有用性が高いと考えます。また、フォトロン社に対しては、術場・術中の映像収録や配信システムの構築、複数の手術室・血管撮影室を一元管理し、低コストで使いやすい環境を実現するソリューションの提案を期待したいです。

槇元剛祐(まきもと・ごうすけ)

75年広島県生まれ。98年鈴鹿医療科学技術大(現鈴鹿医療科学大)放射線技術科学科卒。同年広島市立安佐市民病院放射線科入職、15年放射線技術部勤務、18年血管造影室主任技師。

広島市立安佐市民病院 放射線技術部 槇元 剛祐
広島市立安佐市民病院 放射線技術部 槇元 剛祐

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