導入事例

独立行政法人国立病院機構 豊橋医療センター様 動画ネットワークシステム更新による
院内システムとの連携強化

独立行政法人国立病院機構 豊橋医療センター様

要旨:当院では、動画ネットワークシステム更新に当たり、院内システムとの連携強化をキーワードに構築を行った。構築した結果得られた業務効率の向上など、効果的な構築ができた当院の運用について報告をする。

独立行政法人国立病院機構 豊橋医療センター 統括診療部診療放射線科 松永賢一様、眞﨑和也様に執筆いただきました。
月刊新医療2015年1月号からの転載文

導入製品

当院(図1)は、愛知県豊橋市にある医療機関で、独立行政法人国立病院機構(全国143の病院ネットワーク)が運営する病院である。2005年、独立行政法人国立病院機構豊橋病院(旧国立豊橋病院)と独立行政法人国立病院機構豊橋東病院(旧国立療養所豊橋東病院)が統合し、現在の病院となる。政策医療分野におけるがん、循環器病、内分泌・代謝性疾患、重症心身障害の専門医療施設である。
医療法承認病床数414床で、診療科は内科、精神科、神経内科、呼吸器科、消化器科、循環器科、リウマチ科、小児科、外科、整形外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科、放射線科、歯科・口腔外科、麻酔科の全22科である。07年3月31日に災害拠点病院の指定を受けた。

動画ネットワーク更新の必要要件

13年11月に血管造影装置の更新に伴い、既存動画ネットワークシステムのハードウェア劣化等も考慮し、動画ネットワークシステムの更新も合わせて検討を行うこととした。今回、動画ネットワークシステムを新たに構築するに当たり、既存のシステムメーカーを含め複数社から提案を受けたが、選考のポイントとして以下を重視し、選定を行った。
(1)院内システム(HIS、RIS、PACS等)とのシームレスな連携
(2)透視像の保存および2次活用
提案いただいたいずれのシステムメーカーも、当院の要件に対しそれぞれ魅力的な機能の説明や提案を行ってくれ、優劣付け難かったが、前記項目を重視し検討を重ねた結果、フォトロン メディカル イメージング(以下フォトロン)製動画ネットワークシステム「Kada-Solution」を採用するに至った。

動画ネットワークシステムの構成 (図2)

図2 独立行政法人 国立病院機構 豊橋医療センター 動画ネットワークシステム構成図
図2 独立行政法人 国立病院機構 豊橋医療センター 動画ネットワークシステム構成図

使用する部門は主に循環器科、脳神経外科、放射線科、臨床検査科となっており、今回導入した動画像ネットワークシステムの構成は以下の通りである。
DICOM動画サーバ「Kada-Serve」(実効20TB、DICOM、レポート、Web、透視像保存を同一筐体にて実現)、心機能解析ソフト「CAAS5」LVA、QCA、QCA bifurcation フローティング1ライセンス、DICOM ・レポート専用端末(5式:2面モニター構成4式、1面モニター構成1式)、レポート専用端末(6式:2面モニター構成3式、1面モニター構成2式、ノートPC1台)、透視像録画システム「Kada-Rec」2台を用意した。
端末の設置場所および必要となる機能を事前に各診療科と協議したため、全ての専用端末が必ずしもDICOMビューワである必要性はなかったことから、前記のような構成となっている。
接続したモダリティは、フィリップス エレクトロニクス ジャパン製アンギオ装置・3Dワークステーション×2台、ボストン・サイエンティフィック・ジャパン製IVUS装置×1、日本光電製ポリグラフ装置×1台、日立アロカ製エコー装置×2台、フィリップス エレクトロニクス ジャパン製エコー装置×1台、シーメンス・ジャパン製エコー装置4 台、リマージュ製パブリッシャーである。
院内システムとの連携は、NEC製オーダリングシステム、テクマトリックス製PACS・RIS、日本光電製エコーサーバを介してとなっている。

院内システム(HIS、RIS、PACS等)とのシームレスな連携について

選定で重視したポイントの1つに院内システムとの連携を挙げたが、今日の医療現場ではさまざまなシステムが導入され非常に便利になってきている反面、それぞれのシステムが独立して稼働しており、静止画を確認するにはPACS、動画は動画サーバ、患者情報はオーダリングシステムとデータが分散しているため、必要な画像を確認するにはそれぞれの端末で確認し、オーダリングシステムで閲覧しながらレポートシステムに必要な情報を再度打ち込む必要があった。
前記課題を解決することを第1の目的として、システムを設計し構築を行った。まず、オーダリングシステムから動画ネットワークシステムのレポートシステムへ心臓カテーテル検査、エコー検査情報を連携することとした。通常レポートシステムではRISからMWM接続により患者情報の取得を行うことは多いが、循環器レポートにおいては患者情報の取得だけでは足りず、検査内容や禁忌情報など必要とする情報は膨大にある。
これらのデータをオーダリングシステムから取得することにより、オーダリング端末を閲覧しながら再度レポートシステムに打ち込むという作業を省略することができ、業務効率の向上にもつながっている。業務効率の向上に関しては、他にも以下が挙げられる。

図3 検査室内にある天吊りモニタ
図3 検査室内にある天吊りモニタ

今回検査室内にある天吊りモニタ(図3)へ動画ビューワの映像信号を分配してもらい、過去の画像などの確認のために操作室へ行く必要がなくなった。動画像サーバに保存された画像、レポートシステムに入力したデータについては当然、院内オーダリング端末からWeb画像の参照やPDFレポートの参照を行えるようになっている。
動画像専用端末では、動画を閲覧することが主な使用目的であるが、時に静止画(CTやMRI画像)や3D画像を閲覧したい場合もある。その際は動画像専用端末からPACSシステムのビューワやZIOビューワを呼び出す連携を行っているため、PACSや3D画像が参照できる端末に移動することなく、動画像専用端末から静止画や3D画像の参照が可能となっている。

また、過去のエコー画像について、動画像専用端末からPACSビューワを呼び出す連携と同様に、エコーサーバのWebビューワを呼び出す仕組みを検査室内の動画像専用端末に設定しているため、こちらも移動することなく参照が可能としている。
最後にDICOM CDの作成について、動画像専用端末からDICOM CD/DVDを作成することは可能だが、動画像専用端末ではラベル印刷機能まで持ち合わせていないため、パブリッシャーと接続することとした。パブリッシャーから動画像サーバへDICOM QRを行うことは可能だが、動画ネットワークシステムメーカーの簡易ビューワを付けることができないため、動画ネットワークシステムから簡易ビューワ付きでパブリッシャーへ送信することにより、簡易ビューワ付きでラベル印刷が行えるように構築した。このように、さまざまなシステムと連携することにより、業務上発生する無駄を省くことができた。

透視像の録画および2次活用について

当院では、今まで透視像の録画・保存については民生品を流用したDVD録画装置にて行っていた。DVD録画装置で保存した画像については保管場所の問題もあったが、一番の問題は、DVDディスクに保存していたため、検索等ができず、目的の画像を探すのに時間がかかる上、DVDプレーヤー上で編集ができず、学会発表用にデータを2次利用することができないことであった。
今までは透視像を録画、保存するだけで十分であったが、最近ではインターベーションの治療経過を記録する目的として、透視像の重要性が増しており、必要な情報を迅速かつ簡単に検索し、2次利用できることが強く求められている。
フォトロンが提案した「Kada-Rec」は、当院の前記要望を満たす製品となっていた。患者情報についてはRISからMWMにて患者情報を取得できる。アンギオ装置のフットペダルと連動して録画しているため、ばく射している時だけ録画されるようになっている。収録した後は動画像サーバが保存先となっていることにより、保管場所について悩むことがなくなったのも利点の1つである。また動画サーバが保存先ゆえに、透視画像専用のサーバを別途用意することなく運用でき、コスト面でのメリットも感じられた。録画した画像は編集が可能であり、学会発表用に2次利用できることも大きな利点である。
また、「Kada-Rec」は3入力の映像信号が取り込める仕様になっている。当院では今回透視画像の録画・保存のみにしたが、将来的にはカメラなどの術中映像を取り込むことも検討していきたい。

動画ネットワークシステムの運用フローについて

図4 動画ネットワークシステムを予約表に反映
図4 動画ネットワークシステムを予約表に反映

当院では動画像専用端末を利用する際、セキュリティ対策の一環として、指紋認証デバイスを用いている。指紋認証を行い専用端末を利用できるようにし、前述した通り、まず行うことはオーダリングシステムからオーダーを取得することである。オーダーを取得し、さまざまな情報以外に検査室名や検査内容をレポートシステムの予約表に反映させる。これにより検査前からレポートシステムの記入も可能となっている(図4)。

検査が始まり画像がサーバへ保存されると、レポートシステムへの画像貼り付けや心機能の解析結果などの数値、ポリグラフ装置から送られてくる血行動態データをレポートシステムへ取り込むことができる。
撮影された画像、入力したレポートはオーダリング端末から参照可能であるため、ムンテラや外来、病棟ですぐに画像、所見レポートが確認できる。
また、WebビューワはDICOMビューワと同一のユーザーインターフェースのため、DICOMビューワとWebビューワを意識することなく操作できるのも利点の1つである。通常システムを切り替えた後は以前のシステムと使い勝手が変わるため、操作について問い合わせが多いのが普通だが、フォトロンのDICOMビューワは画面上のマウス操作で複数の操作が可能となっているため、直感的な操作が可能で慣れるのに時間がかからなかった。サーバに保存された画像は2次利用もされている。
DICOMビューワは静止画、動画とさまざまなファイル形式に対応しており、画像処理後や複数の画像を表示した状態で保存できるため、学会での発表資料を作成する際に活用している。今まで利用していた動画像サーバに保管されていた過去データ約6TBのデータ移行についても、迅速かつ確実に実施してもらえ、満足できるシステム構築ができたと思っている。

リスクマネジメント視点でのメーカからの提案を期待

今回当院で採用した動画ネットワークシステムについて記述させていただいたが、今日のITシステムの発展や院内システムの発展は著しく、医療現場の環境や要望も日々変化している。
今後は装置からMPPSにて被ばく線量を取得したり、使用物品をバーコードから読み込むなど、間違いを可能な限り減らすようなリスクマネジメントの観点での提案も期待したい。これからも、さまざまな要望が出てくるかと思うが、メーカーにはより迅速に、より柔軟に対応していただき、ますますシステムが発展することを期待している。

松永賢一(まつなが・けんいち)
●67年愛知県生まれ。89年東海医療技術専門学校卒。89年国立療養所長良病院(現・長良医療センター)、92年旧国立湊病院、97年旧国立熱海病院、02年国立名古屋病院(現・国立病院機構名古屋医療センター)、05年国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター、08年静岡医療センターを経て、12年から豊橋医療センター勤務。

独立行政法人国立病院機構 豊橋医療センター 統括診療部診療放射線科 松永賢一
独立行政法人国立病院機構 豊橋医療センター 統括診療部診療放射線科 松永賢一

眞﨑和也(まざき・かずや)
●90年三重県生まれ。13年鈴鹿医療科学大卒。卒業後豊橋医療センター勤務。

独立行政法人国立病院機構 豊橋医療センター 統括診療部診療放射線科 眞﨑和也
独立行政法人国立病院機構 豊橋医療センター 統括診療部診療放射線科 眞﨑和也

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