導入事例

徳島大学医学部附属病院様 更なる動画ネットワークシステムの活用への道程
—今後への期待も含めて

徳島大学医学部附属病院様

要旨:当院では、動画ネットワークシステムを更新するに当たり、従来のような循環器部門の部門システムではなく、院内システムと連携を図り、病院の経営効率を向上させる目的のシステム構築に取り組んだ。そのシステム運用と有用性について、報告する。

徳島大学医学部附属病院 循環器内科 若槻哲三様に執筆いただきました。
月刊新医療2011年1月号からの転載文

導入製品

大学病院には、地域住民の期待に応えて高度・集学的医療を提供するとともに、医師派遣等を通じて地域医療を守る「診療に関する使命」、高い倫理観と優れた医療技術を持つ医療人を育てる「教育に関する使命」、医学研究を通じて新しい医療を生み出す「研究に関する使命」がある。
当院(図1)は、医科診療と歯科診療を併せ持つ特定機能病院として、皆さんのご支援とご協力のもと、これら診療、教育、研究の使命を果たすため、日夜奮闘している。
2010年4月、国立大学法人が中期計画第2期を迎えるとともに、当院は徳島大学を構成する部局に昇格し、より一層の迅速で果敢な改革が求められることになった。これからも皆さんのご支援とご協力を得て、日々自己変革にチャレンジし、大学病院らしい病院を目指して職員一同努力していきたいと考えている。
当院は、病床数696床で、医科26診療科、歯科4診療科と45の中央診療施設等から成っている。その活動を医師、歯科医師、医療技術者、看護職員、事務職員等約1700人が支えている。09年度の統計によると、外来患者数は約41万人、入院患者数は約21万人に達し、手術件数も約6700件と、文字どおり徳島県下の中核病院として機能している。

循環器内科医局全員の集合写真
循環器内科医局全員の集合写真

動画ネットワークシステム更新の背景及び目的

当院は、02年度に循環器系動画サーバシステムとしてA社製「Bネットワークシステム」を導入して運用開始した。このシステムのハードウェアが供給ベンダーの保守期限を越えて、万が一のハードウェア障害時には、画像保管、レポート作成が不可能になる事態も想定し、循環器系動画サーバ、クライアント部分のハードウェア、ソフトウェアを再構築することとなり、その要件を満たすシステムを厳選した結果、10年9月にフォトロン メディカル イメージング(株)(以下フォトロン社)のシステムを採用した。
システムの更新に合わせて、従来のような循環器部門の部門システムではなく、院内システムと連携を図り、病院の経営効率の向上を目的としたシステムを構築した。

システム構成および運用

図3 徳島大学病院循環器画像管理システム システム構成図
図3 徳島大学病院循環器画像管理システム システム構成図

システムの名称は、循環器画像管理システムである(図3)。使用する部門は、以前より使用していた循環器内科に加え、小児科、心臓血管外科となる。構成は、動画サーバ、We b配信サーバ、カテーテルレポートサーバ(1式)、動画ワークステーション(10式)、カンファレンス用大型モニタ(各診療科に1式ずつ)電子カルテシステム、統合画像診断管理システムとの連携(1式)、放射線科情報システム(以下、RIS)よりMWM取得連携(1式)、接続したモダリティは、フィリップスエレクトロニクス社製シネアンギオ装置(Intergris)、シーメンス・ジャパン社製シネアンギオ装置(AXIOM Artis BA)同社製CTアンギオ装置(AXIOM Artis dTA)日本光電社製ポリグラフ装置(RMC3000)、ボストンサイエンティフィック社製血管内超音波装置(Galaxy2)、である。

図4 血管撮影室
図4 血管撮影室

動画サーバの画像保存領域は、RAID5によって冗長性が保たれている。また、ホット・スペアによる予備のハードディスクを装備することで、ディスクの故障時に自動的にRAIDを再構成することを可能とした。電源の瞬断・落雷などによる停電対策のため、無停電電源装置を構築した。HDDの冗長性以外にも、LTOドライブによるバックアップを行い、データの安全性を十分に確保した。リモートメンテナンス回線により、稼働状況の確認のみならず、障害発生時の対応を可能としている。保存実効容量だが、過去データ(GoodNet)の容量と導入後5年間保存できる容量を設けるため、5TBのストレージを構築した。
動画ワークステーションは、血管撮影室(2式)、デジタル画像処理室、循環器科医局、心臓血管外科医局、循環器科多目的室、小児科多目的室、心臓血管外科面談室、ICU室に配置した(図4)。

電子カルテシステムとの連携

従来は、動画ワークステーションが配置された限られた場所での参照であったが、NEC社製電子カルテシステム「MegaOak」との連携により、院内何処でも画像参照が可能となり、外来や病棟での患者説明にも活用できている。また、レポートデータも閲覧できるようになり非常に便利である。
画像は、DICOM動画ビューワ(Kada-View)と同様のインターフェースと機能を備えたKada-View Web で参照できる。再生だけでなく、拡大、縮小表示、明るさ、フィルタ調整等画像処理ができる。画像に撮影角度の検査情報が表示できるので、どの撮影画像かが分かり易くてよい。

DICOM動画ビューワ Kada-View の特長

最初に体感したことは、画像呼び出しが速いことである。以前のシステムより検査画像リストが速く表示でき、サムネイル作成および画像が再生できるまでが速いと感じた。呼び出し方法で便利な機能は、カレンダーによる日付指定である。カレンダー上で閲覧したい日をクリックするだけでその日の検査画像が検索できるので、とても便利である。
次に挙げられるのは、画像処理の操作が簡単なことである。検査画像上に画像処理インターフェースが組み込まれており、コントラスト、フィルター、ズームをはじめとした画像処理が簡単にできる。数回使用しただけですぐに覚えることができた。
IVUS画像を閲覧することができるようになったことも、当システムを有効活用できていることの1つに挙げられる。従来は、IVUS装置でしか閲覧できなかったが、IVUS装置も動画サーバと接続することにより、動画ワークステーションからも閲覧できるようになった。さらに動画ビューワ上では長軸像を自動生成するため、病変長の計測やステント留置前後で比較でき、IVRの質の向上にもつながっている。
ファイルの保存機能もよく使用する機能の1つである。静止画、動画と様々なファイル形式に対応しているので、学会での発表資料を作成する際にとても便利な機能である。画像処理後や複数の画像を表示した状態で保存できる機能も非常に重宝している。

心機能解析ソフトウェアCAAS5

QCA、LVAの解析は、Kada-View オプションの解析ソフトPie Medical 社製CAAS5で行っている。解析結果は、動画サーバ(Kada-Serve)に送信し、検査に追加保存しているため、動画とともに参照できる。

動画サーバKada-Serve の特長

Kada -Serve は、モダリティよりDICOMデータを受信後すぐに、電子カルテシステムへの配信用ファイルとして、圧縮画像であるWMV形式のデータを作成する。WMV形式のファイルはDICOMデータの約6%までデータサイズを圧縮できるため、全ショットをストレスなく参照でき、診療の効率向上が図れている。データの保存性を高めるため、インフォコム社製の画像管理システム「iRad-IA」経由でGE社製統合画像診断管理システム「Centricity-PACS」に転送し、長期保存を実施している。

患者情報データベースシステムの特長について

以前使用した入力フォームを踏まえ、より使用しやすいフォームを構築した。
もちろん過去データの移植も完全に終えた。レポート入力時にワンタッチで該当する検査画像を呼び出せて、レポートに画像を貼れる。これは便利である。また、作成したレポート結果は、電子カルテシステムに転送でき、電子カルテ上からスムーズに閲覧できる。血管撮影装置と同様にインフォコム社製RISからMWM取得できることで、患者情報入力の手間、入力間違いがなくなったこともよくなったことの1つである。

セキュリティ対策への対応

セキュリティポリシーとして、動画ワークステーションのシステムログインには、生体情報認証(指紋による認証)デバイスを配備した。ウィルス感染対策には、当院全体で利用しているトレンドマイクロ社製ウィルスバスターを動画ワークステーションにインストールし、外部からのウィルス潜入を防いでいる。
情報漏洩対策としては、ファイルエクスポート情報のログ管理を実施している。なりすまし・改ざん対策としては、動画ワークステーションは、Mac アドレス認証システムに接続し、病院全体で実施されているコンプライアンス管理体制に準拠している。

IHE-Jへの積極的取り組み

図5 IT マネジメントシステム概念図
図5 IT マネジメントシステム概念図

当院に導入しているシステムベンダーには、医療情報連携におけるシステムの標準化プロジェクトであるIHEに取り組んでいただいた。取り組むに当たり、IHEに準拠したシステムとしてITマネージメントシステムを構築して(図5:構成概念図)、電子カルテシステムにおいて患者および職員情報の新規登録・変更があった場合、各システムに反映できるようにしている。
また、ログ情報の収集と一括管理(長期保存)も行っている。今後も当院とシステムベンダー間で共通のフローモデルを定義し、標準化モデルの策定に取り組んでほしい。

完全に行えた「過去データの移植」

システムベンダーの変更により過去データの移植が大きな問題であったが、その心配をよそに約7年間の画像データ(約5000検査分)とカテーテルレポートデータを問題なく移植できた。全データを移植できるまでは、既存の「Bネットワークシステム」を撤去しなかったため、過去データを参照することもできたので問題なく運用できた。移植には2ヵ月ほど要したが、無事完全移植できた。
 
今回は、当院で導入したフォトロン社製動画ネットワークシステムの活用について述べさせていただいた。以前は循環器部門のみのシステムだったが、電子カルテシステムとの連携を図ることで、より安定した循環器系画像検査及び画像診断に関する運営を実現し、病院の経営効率維持に貢献できた。
フォトロン社の今後の構想としては、Web環境を利用した院内システム連携の強化、IVUS画像を活用する機能等、循環器画像の取り扱いに常に次世代の用途を見据えた開発計画がある。フォトロン社には、動画ネットワークシステムベンダーの先駆者として更なる活躍を期待する。

若槻哲三(わかつき・てつぞう)
●88年徳島大医卒。92年同大大学院(内科学第二)修了。92年雙立会碩心館病院内科、93年東邦大第三内科常勤研究生。95年徳島大第二内科医員、99年助手、02年同大病院材料部助手、08年同循環器内科助教、11年同講師。

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