導入事例

総合病院 聖隷三方原病院様 動画ネットワークシステム導入による
業務フローの効率化

総合病院 聖隷三方原病院様

要旨:当院ではPACSの更新に当たり、動画ネットワーク・レポートシステムを新たに構築した。撮影された動画像は直ちに電子カルテから参照可能となり、質の高い動画像を参照・評価できる専用端末を検査室・外来・病棟など業務を行う主要な箇所に設置したことで、業務効率が飛躍的に向上した。

導入製品

総合病院 聖隷三方原病院(図1)は、静岡県浜松市の北部に位置している。常駐ヘリポートを配備した救命救急センター、高度な診断・治療機器を備えており、急性期に特化した病院である反面、結核病棟、リハビリ科病棟、精神科病棟、ホスピス、重症心身障害児施設を有し、また、認知症疾患に取り組む医療・介護・福祉が一体となった934床の施設である。
8名の医師から構成される循環器科は、救急救命センターと連携し急性期心疾患の受け入れ、また、地域連携を積極的に推進し、年間CAG(約500例)、PCI(約200例)、アブレーション(約50例)、下肢血管治療(約50例)を行っている。また関連する画像診断として、心臓CT(約600件/年)、心臓MRI(約250件/年)、心臓核医学(約800件/年)、心エコー(約1000件/年)などさまざまな検査を利用し、日常診療を行っている。

動画サーバ・レポートシステム導入の経緯—新システムに求めたもの

2004年の循環器専用血管撮影装置の更新に伴い、フォトロン メディカル イメージング製DICOMビューワ「Kada-View オフライン版」を1台導入した。
シネフィルムからDR画像へ移行し、ビューワとしての役割が主であったが、当時、画像ネットワークが整備されていない状況であり、血管撮影装置とカンファレンスルームに設置した「Kada-View」はオフラインであったため、CD-Rを介して画像を保存・参照していた。
また、レポートシステムもなく、血管撮影操作室の端末でCAG・PCIをはじめ、血管撮影室で行う手技を記録し、後にその記録を参考に「Kada-View」で動画を観察しながら、ファイルメーカーで作成した独自のレポートフォームに入力を行っていた。
その後PACSが整備されたが動画に対応しておらず、11年からはCAG ・PCIの画像を静止画としてPACSサーバに保存し、シネ再生機能を使用して動画として観察できるように改善した。しかし、圧縮された静止画をシネ再生した画質は十分とは言い難いものであった。
経年観察を目的にCAGを行う場合、まして緊急性を伴う場合は、過去の画像やレポートは極めて重要な診療情報になるが、圧縮した低画質の静止画像シネ表示、データベース化されていないレポートシステムでは、不十分であると言わざるを得なかった。
システムの選考に当たり、業務効率の改善を考慮し、特に重要とした項目は、(1)CAG ・PCIなど循環器科が施行する血管撮影画像を動画として画像サーバに保存し、画像がWeb配信され、院内の病院情報システムの電子カルテから参照可能なこと、(2)血管撮影の他に、関連するモダリティ(心エコー、IVUS、OCT)の画像が保存できること、(3)CAG ・PCIをはじめ、アブレーション、右室造影、ペースメーカー、四肢血管撮影・治療のレポートフォームを備え、また関連するIVUS、OCTさらに心臓CT、心臓MRI、心臓核医学、心エコーなど関連するモダリティのレポートフォームを有し、それらがカスタマイズ可能であること、である。
過去の画像・レポートが移行可能、または参照可能なこととし、数社のシステムの提案を受け、選定を行った。
いずれのベンダーも当院の要件を十分に満たし、それぞれ魅力的な機能やメリットを有しており優劣付け難かったが、「Kada-View」はライセンス数に応じて、市販のPCでも動作するため汎用性・拡張性に優れ、また、Web配信のためのいわゆるWebサーバが画像サーバ本体と独立していないため、結果的にいずれもコストパフォーマンスに有利に働いた。
そして、複数の視点から検討を重ねた結果、13年のPACS更新に伴い、フォトロン メディカル イメージング製動画ネットワークシステム「Kada-Solution」導入に至った。 何より使い慣れた「Kada-View」への愛着があったことも、「Kada-Solution」を選定した理由といえる。

「Kada-Solution」のシステム構成

今回導入した統合型動画ネットワークシステム「Kada-Solution」システムのシステム構成は、以下の通りである(図2)

図2 聖隷三方原病院 動画ネットワークシステム構成図
図2 聖隷三方原病院 動画ネットワークシステム構成図

DICOM動画サーバ「Kada-Serve」(実効8TB、DICOM、レポート、Webサーバ同一筐体)、心機能解析ソフト「CAAS5」LVA、QCAフローティング1ライセンス、DICOM ・レポート専用端末「Kada-View」(7式、デスクトップPC、モニタ2面)であり、血管造影操作室(アンギオ1室)、血管造影操作室(アンギオ2室)、循環器科外来、循環器科病棟(Dr.カンファレンス室)、循環器科病棟(CCU)、循環器科病棟(一般病棟)、画像診断部(核医学検査室)に設置した。
連携しているシステムは、GEヘルスケア・ジャパン製:PACS(Web環境を利用し、HIS端末より画像とレポートの連携)、日本光電製:心エコーサーバ(Web環境を利用し、DICOM専用端末より画像の連携)、インフォコム製:RIS(レポートシステムにてオーダー取得)である。
接続しているモダリティは、シーメンス・ジャパン製(アンギオ装置:1機)、フィリップスエレクトロニクスジャパン製(アンギオ装置:1機)、テルモ製(血管内超音波装置:1機)、ボルケーノ・ジャパン製(血管内超音波装置:1機)、セントジュードメディカル製(OCT装置:1機)である。
レポートについては、レポート種別に、虚血:CAG、PCI、IVUS/QCA、AoG、PTA、UCG、不整脈・心不全:PMI、EPS/ABL、画像診断:CT、MRI、RI、その他:other の専用レポートフォームを作成した。
また、「Kada-Report」のオプションである「放射線被ばく線量管理レポート」も導入した。

フォトロン製動画ネットワークシステムの特長

(1)「DICOM動画サーバ:Kada-Serve」

「Kada-Serve」は、DICOMサーバ、Webサーバおよびレポートサーバを1つのサーバ筐体で運用できるため、導入費用、保守費用を抑えることができるコストパフォーマンスの高いサーバシステムである。
また、モダリティよりDICOMデータを受信後すぐに、電子カルテシステムやPACSへ配信する圧縮画像であるWMV形式のデータを作成するが、DICOMデータの約6%まで圧縮可能なため、電子カルテ端末でもストレスなく画像観察が可能である。

(2)DICOM動画ビューワ:「Kada-View」の特長

患者IDによる検索に加え、カレンダーによる日付指定で閲覧したい検査画像を検索できる。
検査画像上にコントラストや輪郭強調などの画像処理を施す機能が組み込まれているため、画像から目を離すことなく調整することができる。IVUS画像は、動画ビューワ上で長軸像を自動生成し、病変長の計測やステント留置前後で比較できる。
ファイルの保存機能は、静止画、動画とさまざまなファイル形式に対応しており、また、画像処理後や複数の画像を表示した状態で保存できるため、学会での発表資料を作成する際に活用している。

(3)心機能解析ソフトウェア

Pie Medical Imaging のCAAS 5 シリーズ(QCA、LVA)を使用しているが、Kada-View とシームレスな連携ができており、解析した結果は、動画サーバ(Kada-Serve)に送信し、検査に追加保存しているため、動画とともに参照できるようになっている。

(4)循環器レポートシステムの拡張

FileMaker をベースとしたカテレポートシステムであり、カスタマイズはユーザーの要望に合わせ、CTやMRIなどの画像診断レポートも作成可能である。作成したレポート結果は、電子カルテシステム上で閲覧することができ、過去データの移行や参照できるシステム設計が可能である。

システム導入による業務フローの改善と新システムに期待すること

統合型動画ネットワークシステム「Kada-Solution」システムの導入により、飛躍的に向上した業務フローを紹介する。
 
(1)システム導入以前は、CAG ・PCI終了後にCD - Rに保存した動画をドクターカンファレンスの「Kada-View」で参照しながら、FileMaker で作成したレポートフォームに入力を行い、電子カルテに添付していた。
システム導入後は、CAG ・PCIの動画は、リアルタイムに「Kada-Serve」に転送されるため、CAG ・PCIを実施しながら、レポート作成ができるようになった。
また、狭窄率解析・LVG解析も、血管撮影装置で行う場合は、透視中・撮影中は行うことができなかったが、システム導入後は、透視・撮影と並行しながら「Kada-View」で解析可能となった。
患者への結果説明は検査終了後、直ちにWeb配信された画像を電子カルテからストレスなく参照でき、また、CT、MRI、核医学検査など関連する画像診断についてもPACSとの連携で瞬時に参照できるので、利便性に優れる。
 
(2)過去画像・過去レポートの参照に関して、過去1年間分の画像を移行し、さらにPACSの更新の際に、CAG・PCIの静止画をシネ再生表示で参照していた画像も移行したので、画像参照に関しては問題ないと考えている。
過去のレポートは新システムに移行できなかったが、参照用としてFileMaker で作成した過去レポートを参照できるように「Kada-Report」に連携するボタンを新たに作成した。
 
(3)当院では間もなく、循環器用血管撮影装置の更新が行われる。血管撮影装置と連携することによって、今回レポートシステムに追加した「放射線被ばくレポート」の運用を開始する。
現在は、血管撮影装置に付属の面積線量計から算出される積算線量・透視時間をカルテに記載しているのみであり、患者の皮膚障害を含めた被ばく管理が十分とはいえない。
「放射線被ばくレポート」は、血管撮影装置本体からDICOM情報として得られる各種撮影条件をもとに局所被ばく線量を算出し、局所被ばく線量から皮膚障害に対するレベルや患者対応基準が分かりやすく表示される。専門的な知識のないスタッフでも容易に被ばくの程度が把握でき、患者の検査後の皮膚障害へのケア、医師およびスタッフの被ばくに対する意識向上も期待できる。
 
(4)地域連携を進める上で、照会元からの画像のPACSへの保存、紹介先への画像をCD- Rに保存する作業は非常に煩雑な作業であったが、システム導入後は7台の「Kada-View」から簡単に行えるようになった。
 
さて、今回導入した統合型動画ネットワークシステム「Kada-Solution」システムには非常に満足している。さらに今後、その周辺システム、すなわち、今回連携を摸索しながら連携に至らなかった、負荷心筋負荷シンチの心電図、負荷心電図、ホルター心電図など心電図との連携、また、検査直後のベッド上安静の患者に対して画像を参照しながら説明するためのタブレットPCによる院内Web画像参照システムとの連携の構築を検討したい。
また、フォトロンは、ビデオ画像を管理するシステム「Kada-Rec」を有し、システムのサーバと共有できることから、PCIの透視画像の管理をはじめ、脳血管内治療、内視鏡画像、術中ビデオ撮影画像など、循環器領域に留まらず、病院全体の動画システムへの発展を期待したい。
今回、PACS更新に伴い、動画ネットワークシステム「Kada-Solution」を導入するに当たり、その仕様により、われわれのシステムがPACSや電子カルテといかに連携をするか摸索しながらの作業を行った。
作業性・利便性と費用の駆け引きに難航する場面にも、フォトロンの柔軟な対応とわれわれの立場に立った提案のおかげで、このようなシステムを構築することができた。われわれのように、新規に動画ネットワークシステムを導入する施設には、同社のようなサポートが不可欠であると実感した。

若林 康(わかばやし・やすし)
●62年静岡県生まれ。87年浜松医大卒。同年同院第三内科研修医、88年静岡済生会総合病院環器科研修医、92年浜松医大病院第三内科医員、96年磐田市立総合病院循環器科医長、01年社会保険浜松病院循環器科部長を経て、08年から聖隷三方原病院循環器科部長として現在に至る。

聖隷三方原病院 循環器科 若林康
聖隷三方原病院 循環器科 若林康

関連する導入事例