導入事例

大阪市立総合医療センター様 動画ビューワの一元化による
画像診断の効率化

大阪市立総合医療センター様

要旨:当院では動画ネットワークシステムを更新するに当たり、院内システムと連携を図り、専用の動画ワークステーションの台数を少なくし、コスト軽減に取り組んだ。また、コストを抑えるだけでなく、エコー動画も動画ネットワークシステムで参照できるようになったため画像ビューワの一元性が図れ、より安定した循環器系画像検査および画像診断に関する効率的かつ効果的な運営を実現できた過程を報告する。

大阪市立総合医療センター 中央放射線部 西條均様に執筆いただきました。
月刊新医療2013年1月号からの転載文

導入製品

当院(図1)は1994年12月、大阪市制100周年記念事業の一環として、既存の5市民病院を統合し、開院当初は40の診療科でスタートしたが、現在では53診療科・10臓器別センターを有し、病床数1063床を備えている。また大規模高機能病院として救命救急センター、小児・総合周産期母子医療センター、災害拠点病院、感染症指定医療機関、がん診療連携拠点病院、高度・専門医療の提供に努めている。
現在は病院事業改革の進行中で、病棟・外来・救急・手術室などの運用システムの抜本的な見直しを行っており、特に血管内治療・内視鏡手術・放射線治療など、患者さんにとって侵襲度の低い医療の充実を図っている。
2009年4月1日から循環器内科、心臓血管外科の連携をより強化すべく循環器センターを発足し、一般病棟と冠疾患集中治療室(CCU)を備え、心臓血管外科、救命救急センターとの緊密な協力下に、循環器内科10名、心臓血管外科6名の熱い情熱を持った医師たちにより、24時間体制で循環器救急診療にも対応している。
小児心疾患では小児一般病棟と新生児集中治療室(NICU)や集中治療室(ICU)を備え、小児循環器内科5名、小児不整脈科4名、小児心臓血管外科4名が連携しチーム医療を行っている。
特にカテーテル治療では、アンプラッツァ法による心房中隔欠損閉鎖術を行っている他、小児では実施施設が少ないアブレーション治療にも対応している。 11年度の循環器全体での症例数は、検査、約1300件、カテーテル治療、約500件である。今回、循環器系画像検査に対応する当院の画像ネットワークシステムについて紹介する。

動画ネットワークシステムの導入背景

03年度に、フィルムレス化によりシネフィルムを廃止した。当時の動画ネットワークシステムでは専用端末を血管撮影室・病棟・医局・外来に14台設置し、診断・解析に使用してきたが、ハードウェアの老朽化に伴い、装置を更新する運びとなった。選考の結果、12年1月にフォトロン メディカル イメージング製動画ネットワークシステム「Kada-Solution」を導入した。
システムの選考に当たり、操作性、将来性を考慮し、特に重要とした項目は画像がWeb配信され院内の病院情報システム(HIS)から参照可能なこと、解析機能はフローティングライセンスとすること、既存の画像データおよびレポートデータを全て新システムに移行可能でデータ保存に対するバックアップが構築されていること、レポートシステムはカスタマイズ可能なこと、セキュリティ対策が施されていることとし、既存のシステムメーカーを含む数社のシステムのプレゼンテーションや提案を受けた。
どのベンダーも当院の要求を概ね満たしていたが、フォトロンを評価したポイントの1つは、CVIT J-PCI,J-EVT/SHD レジストリーへの登録が大変簡単で、複数の症例もまとめて転記できる点である。

動画ネットワークシステムの拡張を目的とした構成(図2)

図2 システム構成図
図2 システム構成図

使用する部門は主に循環器内科、心臓血管外科、小児循環器内科、小児不整脈科、小児心臓血管外科となっている。
構成は、動画サーバ、Web配信サーバ、カテーテルレポートサーバ、バックアップ装置(1式)、動画ワークステーション(8式)、NEC製電子カルテシステム「MegaOak」との連携(1式)、富士フイルムメディカル製PACS「SYNAPSE」との連携(1式)、インフォコム製放射線情報システム(以下、RIS)よりMWM取得連携(1式)、富士フイルムメディカル製内視鏡・超音波システム「NEXUS」との連携(1式)である。
接続したモダリティは、フィリップス エレクトロニクス ジャパン製アンギオ装置(Integris Allura Biplane, Allura XperFD10/10, Allura Xper FD20)、シーメンス・ジャパン製アンギオ装置(AXIOM ArtisZee BA)、同社製ポリグラフ装置、GEヘルスケア・ジャパン製ポリグラフ装置、ボストンサイエンティフィック製IVUS装置(i-lab2)、センド・ジュード・ジャパン製OCT装置である。

院内システムとの連携

ー 外来・病棟での患者説明に活用

図3 SYNAPSE SCORP のマトリックス
図3 SYNAPSE SCORP のマトリックス

従来は、動画ワークステーションが配置された限られた場所での参照であったが、現在は、「MegaOak」「SYNAPSE SCORP」の連携により、院内どこでもHISから画像参照が可能となり、外来や病棟での患者説明にも活用されている。
SYNAPSE SCORP のマトリックス(図3)上から、モダリティおよび検査日で画像およびレポートを呼び出し一覧表示することで、各部門から発生する各種検査画像や所見レポートを一元管理ができ、大変有用である。
Webビューワは単に再生するだけでなく、画像の拡大、縮小表示、明るさ、輪郭強調等の画像処理ができ、DICOM動画ビューワ「Kada-View」と同様のインターフェースであり、操作方法も全く同じで、再生スピードも問題なく満足している。

動画サーバ

ーコストパフォーマンスの高いシステム

「Kada-Serve」は、DICOMサーバ、Webサーバおよびレポートサーバを1つのサーバ筐体で運用できるため、導入費用、保守費用を抑えることができ、コストパフォーマンスの高いサーバシステムである。モダリティよりDICOMデータを受信後、すぐに電子カルテシステムやPACSへ配信する圧縮画像であるWMV形式のデータを作成する。WMV形式のファイルはDICOMデータの約6%までデータサイズを圧縮できるため、全ショットをストレスなく参照でき、診療の効率向上が図れている。
動画サーバの画像保存領域は、RAID5+1の構成によって冗長性が保たれている。また、ホット・スペアによる予備のハードディスクを装備し、ディスクの故障時に自動的にRAIDを再構成することを可能とした。電源の瞬断・落雷などによる停電対策のため、無停電電源装置を構築した。
HDDの冗長性以外にも、1次バックアップにNAS装置、2次バックアップ装置にRDX装置を配備し、データの安全性を十分に確保した。保存実効容量だが、過去分の全画像と導入後5年間保存できる容量を設けるため、14TBのストレージを構築した。
動画ワークステーションは、アンギオ室(3式)、読影室、循環器内科病棟、循環器内科カンファレンス室、小児循環器科病棟、小児循環器科医局に配置している。

DICOM動画ビューワ

ー画像呼び出しが簡単

図4 Kada インターフェース
図4 Kada インターフェース

画像の呼び出しが大変簡単で、画像処理は検査画像上(図4)のマウス操作のみで、コントラスト、フィルター、ズームをはじめとした画像処理が行える。IVUS画像とOCT画像を閲覧することができるようになったことも、当システムを有効活用できていることの1つに挙げられる。

臨床に欠かせない心機能解析ソフトウェア

心機能解析は、PieMedical のCAAS5シリーズで行っている。成人用では、QCA、LVA(Biplane 対応)、小児用ではLVA・RVA(Biplane 対応)を使用している。CAAS5は「Kada-View」とシームレスな連携ができており、解析した結果は、動画サーバ(Kada-Serve)に送信し、検査に追加保存しているため、動画とともに参照できる。以前は、他社の解析ソフトを使用していたため、特に右心室の容量計算の式を一致させる必要があったが、FileMaker を用いた変換プログラムを用いて対応が可能であった。

カテーテルレポートシステムの拡張

以前使用したレポートシステムの入力フォームを踏まえ、より使用しやすいフォームを構築することが条件であったが、ほぼ目的を達することができた。さらに使い勝手のよいフォームとすべく、現在も検討中である。もちろん過去データの移植も完全に終えた。
よくなった点は、レポート入力時に該当する検査画像を呼び出せて、レポートに画像が貼れることである。また、作成したレポート結果は、SYNAPSE SCORP に通知し、SYNAPSE SCORP のマトリックス上から閲覧できる。アンギオ装置と同様にRISからMWM取得できることで、患者情報入力の手間、入力間違いがなくなったことも改善されたことの1つである。

セキュリティ対策

ー生体情報認証デバイスを配備

セキュリティポリシーとして、動画ワークステーションのログインには、生体情報認証(指紋による認証)デバイスを配備し、権限は使用者と管理者の設定を行った。また動画ワークステーションは、Macアドレス登録にて通信セキュリティの管理をしている。

過去データの移行は無事完了

以前の動画サーバに保存していた約9年間(約2万検査分)の画像は、全て移行できた。DVDディスク内の画像移行があったため、当初の計画より時間を要したが、無事移行作業を完了した。

動画ビューワを使用したエコー画像の診断による業務改善

フォトロンの動画ネットワークシステムを導入後、画像診断に役立っている点を次に述べる。 エコー画像は、全て生理検査部門のサーバに保存されていた。画像はWindows MediaPlayer によって参照していたため、静止画には影響がなかったが、心エコー画像を参照する場合には再生と停止機能しかなく、コマ送り再生や画像処理、複数画像の同時表示といった機能を求め、表示方法を模索していた。一時生理検査部門のサーバ更新も考えていたが、今回Kada-View Web が導入されたことにより、その活用を検討した。
富士フイルムメディカル、フォトロン両社からの提案もあり、サーバは現在の生理検査部門のサーバを使用しつつ、心エコー画像のみKada-View Web を介して画像を参照することとし、画像の呼び出しポータルを「SYNAPSE SCORP」としたことで、その悩みを解決できた。連携は、電子カルテ更新時に実施した。エコー動画は生理検査部門のサーバ経由でフォトロンの動画サーバへの自動転送機能があるため、エコー装置から1方向送信により誤送信することがない。
懸念としていたフォトロンの動画サーバの負担だが、シネ画像以外にエコー画像まで受信、保存することで、画像表示までの遅延を心配していたが、今のところ特に問題はなく、運用できている。シネ画像と心エコー画像を、専用端末ではDICOMの高画質で優れたビューワを用いて同時に参照できる環境が構築できた。また、全てのHIS端末で画質は若干落ちるものの、臨床には十分有用な画質のシネ画像とエコー画像を非常に高速に参照することが可能となり、臨床現場における動画環境は一変して快適な環境となった。
ただ、動画サーバにエコー画像の保存ストレージを計算していなかったため、今後エコー用のサーバを配備もしくは増設する計画も必要と考える。

より安定し効率的な画像検査・診断を実現できた動画ネットワーク活用

今回は、当院で使用しているフォトロン製動画ネットワークシステムの活用について述べさせていただいた。
本システムを導入する以前は電子カルテ、PACSから静止画を参照することは可能であったが、動画は参照できなかった。しかし今は、院内システムと連携することで、循環器系に関わる冠動脈造影、左心室造影、右心室造影、下肢造影、冠動脈・末梢血管インターベンションの動画を、場所を問わずに画像参照することができるようになり、専用の動画ワークステーションを配備する数が少なく済みコスト軽減できた。
コストを抑えるだけでなく、エコー動画も動画ネットワークシステムで参照できるようになり、画像ビューワの一元性が図れ、より安定した循環器系画像検査および画像診断に関する効率的かつ効果的な運営を実現することができた。
今後は、他施設より持参された動画像についても本サーバに保存することで診断に役立てる。また逆に院内で撮影された動画像については、他施設へ紹介用(診断用)としてCD -R等での提供を行うことを近々に予定している。
日々変化する病院の要望に対して、メーカーが迅速に対応してもらえるかは大変重要である。未改善の点もまだあるが、今後も柔軟に対応していただき、より安定した画像診断の効率化を図るべく、フォトロンには、今後も循環器領域が必要とするシステムの機能向上を期待する。

西條 均(さいじょう・ひとし)
●60年大阪府生まれ。83年清恵会第二医療専門学院卒。同年愛染橋病院、86年大阪市立小児保健センター、93年大阪市立総合医療センター、95年大阪市立十三市民病院を経て、00年大阪市立総合医療センター中央放射線部として、現在に至る。

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