導入事例

岡山ハートクリニック様 利便性の追求が時間的・実質的コストの削減に役立つ

岡山ハートクリニック様

要:岡山ハート、旨クリニックは循環器カテーテルを中心としたクリニックとして09年3月に岡山市中区に開院した。循環器動画像ネットワークの導入の経験から、特にフォトロン メデカィル イメージグン社製の「Kada-Serve」 と「Kada-View」 の 有用性について報告する。

岡山ハートクリニック 日名院長に執筆いただきました。
月刊新医療2010年1月号からの転載文

導入製品

循環器の専門医をそろえカテーテル治療を行う岡山ハートクリニック

岡山ハートクリニック(図1)は、2009年3月2日にオープンしたばかりのクリニックである。岡山市の中心部のやや北東、岡北大橋の東たもとで、循環器のカテーテル検査、治療を中心とする19床の有床クリニックである。医師は5名で、全員が循環器の専門医でカテーテルのエキスパートである。
我々が目指している理念の1つは、〝顔が見える医療〞と我々は呼んでいるが、外来から入院治療まで同じ担当医が受け持つことで、患者さんに安心感をもたらすと同時に、何より迅速に現在の最高水準の医療を安定して患者さんに提供することである。
近年、入院設備を持ってカテーテル治療を行う、循環器に特化したクリニックの開業というのが、全国的にみてある種のトレンドとなっている。ただ、従来の施設は虚血領域を専門とするものがほとんどであったのに対し、我々のハートクリニックの特質は、虚血から不整脈のアブレーション、ペースメーカーまであらゆる分野でspecialist を配置しているという点が挙げられる。このようなクリニックは全国でもまだ類を見ない。
今回開院するに当たって、フィルムレスでのストレスのない使用環境を実現することを目標に、院内の画像ネットワークを構築することが重要課題であった。特に血管造影画像では、フレーム数も多く、撮影数も多くなることから、幾つかの施設を見学させていただき、最終的に動画像ネットワークシステムでは、フォトロン メディカル イメージング(以下フォトロン) 製の「Kada-Serve」と「Kada-View」を選択した。
開院後約10ヵ月が経った現在までの使用経験から、循環器領域での動画像ネットワークの有用性と稼働環境メリットについて述べさせていただく。

循環器動画像ネットワークの有用性について

モダリティは、東芝製celeve シングルプレーン・バイプレーン各1台、IVUS装置2台、エコー装置2台、64列マルチスライスCT装置で構成されており、電子カルテはセコム製ユビキタス、PACSはテクマトリックス製静止画閲覧システムを採用した。
当院では、新規に開業するということで、画像ネットワーク導入機器の選定については、時間をかけて十分に吟味した。
選択の基準としては、循環器診療の要求に堪え得る表示性能を有していること、すなわち素早く検索・表示が可能であること、さらには1台のPCで動画も静止画も両方の画像が参照できること、利便性、そして最後にコストである。

動画像DICOMビューワ「Kada-View」の評価

図2 岡山ハートクリニックシステム構成図
図2 岡山ハートクリニックシステム構成図

画像ネットワークの構成については、図2に掲げるが、フォトロン製のシステムは、画像参照端末用「Kada-View」と動画像サーバー「Kada-Serve」、心機能解析ソフトは「CAAS5」からなる。
まず、我々が日常業務で多用する動画像DICOMビューワ「Kada-View」についての評価である。
日常使用していて感じることは、第一に使いやすさという点である。画像参照するに当たり、画像上にすでに画像処理インターフェースが組み込まれており、画面上でブライトネス、コントラスト、ガンマ、フィルターが簡単に変更可能である。また、マウスホイールを使用すれば簡単にコマ送りができ必要なフレームを簡単に選び出すことが可能だ。このような機能により患者様への説明時にはストレスなく説明に集中することができる。
次にあげられるのは、「速さ」であろう。シネ画像、心エコー画像、CT画像はもとよりIVUS画像に関しても全くストレスを感じることはない。検索から表示・再生に至るまで非常にスムーズである。
さらに、「Kada-View」では、従来装置でしか生成されていなかった、IVUSの「長軸像」が自動生成される。これを、ステント留置前後で比較できるので、非常に重宝している。
3点目は「ファイル出力」の機能である。院内勉強会や学会発表用に資料を作成する場合に、この機能は便利である。通常のファイル出力に加えて、最大4検査の画像がビューワ上で見ているままの形で、1ファイルに出力される。また、動画像の場合は、画像各々について、その再生範囲やすべての画像処理を反映してファイル出力可能なので画像の比較資料作成に威力を発揮している。

動画像DICOMサーバ「Kada-Serve」の評価

図3 電子カルテ画面からの動画参照
図3 電子カルテ画面からの動画参照

次に、動画像DICOMサーバ「Kada-Serve」の評価である。通常はストレージとして「黒子」的な存在であるが、「Kada-Serve」の場合は大きな機能が隠されている。「Kada-Serve」は、通常のDICOM画像を受信保管するほかに、配信用の圧縮画像ファイルを生成する機能がある。圧縮画像ファイルは、動画圧縮ファイルとしては汎用性の高いWindowsMedia 形式である(図3)。

この圧縮画像ファイルを院内配信用として活用している。再生はWindowsMediaPlayerでありOS付属であるので、ライセンス費用がかからず、コスト面で有利である。
この圧縮画像ファイルも呼び出しは簡単である。テクマトリックス製のPACS、セコム製電子カルテとの連携が綿密になされており、PACSの検査リストにも動画の検査画像リストが表示されるので、そこから選択するだけでスムーズに再生が始まる。検査リストが統合されているので、モダリティにより画像の保管場所を考えて検索先を指定する必要がないのは助かる。
DICOM原画像で評価する必要がある場所では「Kada-View」を使用し、それ以外の場所では電子カルテ・PACS兼用の端末で圧縮動画像を参照している。
従来は、各ベンダーが各々のシステムとして販売されていたものが、近年はうまく融合・連携してよりユーザーフレンドリーに進化してきたと思える。
当院が採用するシステムに関しては、その点を強く要求した。フォトロン、テクマトリックス、セコムのシステムは当院と似た施設での採用事例も多いと聞く。
規模の大きな病院と、クリニックでは規模の違いこそあれ、導入する装置、システムについて、特に循環器領域では差がない。しかしながら、当院が採用したシステムでは、同等の設備を導入しながら、各ベンダー間の連携(使いやすさ)を追求し、それが結果としてPCの共用をはじめとするコストダウンにもつながったと感じる。
単一メーカーの製品を採用し、そこそこの及第点のシステムで使用者側がシステムに合わせることを思えば、マルチベンダーでありながら十分満足のいくシステムを構築できたのではないかと満足している。
また、フォトロンをはじめとして、各メーカーは自社開発であるのも、今後使用していく過程でバージョンアップなどのメリットとして出てくるのではないかと期待している。

動画データが多用される循環器領域に不可欠な動画像ネットワーク

図4 心臓カテーテル操作室の端末
図4 心臓カテーテル操作室の端末

今回、循環器カテーテルを中心とする新規開業に際して、動画像ネットワークを導入してからその運用経験を中心に感想、解説を簡単ではあるが述べさせていただいた。
循環器領域では、検査から治療まで特に動画データが多用されるため、動画像ネットワークの存在は不可欠なものである。我々は、基幹となる動画像サーバーとしてフォトロン製「Kada-Serve」とDICOM VIEWERである「Kada-View」を選択し、右に述べたように他のベンダーのものとネットワークを構成した。マルチベンダーでありながら、その操作性には大変満足している。これからネットワークの構築を検討されている施設では、妥協することなく利便性を追求されることをお勧めしたい。そしてまたそれが、操作ストレスを解消してくれると同時に、時間的また実質的コスト面の削減に役立つ場合があることを強調したい。

日名一誠(ひな・かずよし)
●56年岡山県生まれ。81年三重大医卒。同年岡山大第一内科入局。国立岩国病院などでの研修後、85年から90年まで岡山大第一内科循環器グループで勤務。90年2月より09年1月まで心臓病センター榊原病院に勤務の後、同年3月岡山市中区に岡山ハートクリニックを設立。現在、院長兼理事長。

岡山ハートクリニック 日名院長
岡山ハートクリニック 日名院長

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