導入事例

国立病院機構 長崎医療センター様 新たな業務フローをもたらす
統合画像ネットワークの導入

国立病院機構 長崎医療センター様

要旨:施設内では、あらゆる部門でIT化が進む中、各部門で最適化が試みられている。循環器部門もその例外ではなく、動画ネットワークシステムが導入され、利便性に貢献してきた。今回、新たに他システムとの連携が行える統合型動画ネットワークシステムを導入することにより、さらなる医療の質の向上とワークフローの効率化を図った。

国立病院機構 長崎医療センター 赤澤史生様に執筆いただきました。
月刊新医療2013年1月号からの転載文

導入製品

広い医療圏を持つ3次救急病院

国立病院機構長崎医療センターは、長崎県の県央の大村市にあり、人口は、約10万人であるが、当院の病床数は643床(一般610床、精神33床)の病院であり、救命センターを持つ3次救急病院である(図1)。当院の医療圏は広く、長崎県唯一のドクターヘリが、長崎県の離島だけではなく佐賀県の一部をカバーし地域医療に貢献している。また、近くには海上自衛隊の航空基地があり、夜間や雨の日などは自衛隊ヘリが急患の搬送を行っている。
当院の外来患者数は、1日約800名、救急搬送患者は、年間約1万2000名(内ヘリコプター搬送160名)であり、手術数は、年間約5000例である。循環器や脳卒中の急患も多く、その血管造影検査は年間1000例を超える。

新動画システムの導入事情

2002年に導入した動画像システムは、動画サーバ、DVDチェンジャー、ワークステーション、高速専用回線敷設などが高価な時代でもあり、院内の限られたところに設置することしかできなかった。唯一、患者説明用に病棟に設置された専用端末も故障し、カンファレンス・レポート作成するために使用していたものを兼用させ、苦労を強いられていた。また、外来での患者説明は、検査終了後に静止画を保存し画像を静止画ビューワで表示させて行うしかなかった。また静止画用の読影端末には、循環器用のレポートのフォームがなく、循環器内科、小児科がそれぞれ以前から使っている独自のファイルメーカーでレポートを作成し、病院情報システムへの取り込みを行っている現状であった。
導入の際の重要事項は、新動画システムでのレポート作成・解析、レポートへの静止画の貼り付け、病院情報システムでWebによるレポート・動画の公開であった。また、各端末への動画配信用の配線は、HUBの管理が行え、ネットワークのトラフィック状況が把握できるという利点を有する静止画ネットワークと共用することにした。静止画ネットワークは、ギガネットを11年更新時に敷設しており、使用率は最大100MB/s程度、動画を使用しても問題がなかったことも理由として挙げられる。
今回の導入で問題となったのは、新動画システムとRISとの接続と過去動画の移行であった。装置はMWMを行えば、患者情報等DICOM情報を取得できる。しかし、サーバ同士のオーダの連携を行うためには非常に時間がかかり高価となる。前述したように今回は時間が限られ予算も十分でなかったため、画像からDICOM情報をレポートシステムに取り込み、オーダ情報連携は行っていない。
また、過去動画に関しては、コストの観点から、移行をメーカに依頼せず、移行専用の端末を設置し、当院で少しずつデータ移行を行った。

システム構成と電子カルテとの連携

今回導入した統合型動画ネットワーク「Kada-Solution」(フォトロン メディカル イメージング)のシステム概要は、DICOM動画サーバ「Kada-Serve」一式、DICOM専用端末「Kada-View」5台、接続モダリティは、心カテ装置、一般アンギオ装置、IVUS2台、心エコー4台、OCT1台とした。サービス内容は、富士通電子カルテシステムEGMAIN-GX との動画Web連携、東芝静止画PACS(TFS-01)とのDICOM静止画の送受信(Q/R, Storage)、同様に東芝レポーティングシステムとのWeb連携、カテレポートのPACS、電子カルテとのWeb連携を行っている(図2)。これにより電子カルテ上での動画(WMV圧縮画像)参照、動画専用端末での静止画PACSに保管されているDICOM画像の参照、レポーティングシステムへのキー画像の張り付け、カテレポートのDICOM専用端末および電子カルテの端末での参照等が行える。

図2 長崎医療センターシステム構成図
図2 長崎医療センターシステム構成図

今まで動画像ネットワークシステムは、その画像容量の大きさゆえに他のシステムとの連携を妨げてきたが、今回のシステムはその問題を解決して、スムーズな連携を達成している。
特に電子カルテ上で参照できる動画像は、WMV形式で最大94%まで圧縮されているため、電子カルテの端末でも全くストレスなく動画観察ができ、画質も予想以上によく、外来診察時や、PCI前の患者説明などでの利用が可能で、医師からの評価も非常に高い。さらに専用端末と全く同じユーザーインターフェースを使用し、ほぼ同等の機能を有しているため、操作性が変わらないところが優れている。一般的に動画の専用端末は高額になりがちであるが、このシステムでは前記のように電子カルテとの連携により大幅にコストを抑えた形で、施設内の必要とされる場所で動画やレポートの参照が行える。

基本性能の高さが選定のポイント

今回システムの導入に際して最も重要視した選定基準は、先に述べたとおり他システムと柔軟に連携が図れるところにあった。連携を図り多くの情報を共有することによって、新たな業務フローが確立できると考え、選定を進めた。
結果として電子カルテおよび静止画PACSとの連携が実現し、動画、静止画、カテレポートを施設内に広く配信でき大幅な業務の効率化が図られた。特に循環器部門およびアンギオ室で発生する全ての動画、静止画を一括して動画サーバに送ることにより、それらは動画サーバのマルチゲートウェイ機能により事前に決められた送信先に、必要であれば圧縮等変換を施され自動転送される。検査終了直後より院内で動画が供覧できるため、緊急治療を要する場合際は、ルーチン撮影後、患者およびその家族に説明し、迅速にPCI治療に移行することができる。また人の手を介することなくデータが自動配信されるため、間違いもなく効率のよいワークフローが実現している。
もうひとつ選定の決め手となったのが、ネットワークシステムの基本性能といえる、スピード、操作性およびファイル変換機能が他社システムより優れている点である。
先ずはスピードである。検査の検索速度が速く、これは導入後改めて実感している。更に動画の取得、再生やIVUSの長軸の再構成など、通信に関する速度および画像処理に関する速度ともに速く、このシステムの完成度の高さがうかがえる。
操作性に関しては、Kada インターフェースという独創的なインターフェースを装備している。これは動画が表示される画面に画像を取り扱うコマンドが埋め込まれており、再生、停止、ズーム/パン、輝度、輪郭強調などの操作を画面から目を離さずに行うことができる。循環器内科医は冠動脈造影像を動画で再生した状態で診断を進めていくことが常であり、画像から目を離さず動画の状態で、画像処理を加えられる機能は臨床要求に即している。
学会や研究会の発表および院外での症例検討会等の資料作成に必要となるのがファイル変換機能で、静止画はBMP、JPEG、TIFFに、動画はAVI、MPEG、WMVに変換可能である。また複数の動画、静止画を画面に表示した状態で一括変換できる機能もあり、非常に便利である。しかし、院内の情報センターの運用規定の中で、ウイルスが混入する恐れがあることと、患者情報の持ち出しになることからメディアへの入出力は禁止となっている。また全ての端末へメディアドライブのUSBポートの無効化と、ウイルス対策ソフトを入れることを義務づけ、定期的に定義ファイルの更新を行っている。

今後期待したい新たなる機能

我々診療放射線技師の大きな関心事として、PCIにおける患者被ばく低減が挙げられる。最近PCIは高度かつ複雑になり、それと並行して検査時間、特に透視時間が長くなり、被ばく障害の発生頻度は決して低くない。そのため心カテ装置の線量調整はもとより、治療中の透視時間の監視や累積での被ばく線量の把握は重要と考えている。しかしながら、現状の心カテ装置では照射X線量の累積は分かっても患者の局所皮膚被ばくまでは算出できていない。

図3 放射線被ばくレポート
図3 放射線被ばくレポート

今回導入したレポートシステムには、患者の局所皮膚被ばくを算出できるレポート機能が装備されている(図3)。心カテ装置から出力されるDICOM附帯情報の中のアームの向き、SID、管電流、管電圧、照射時間などを取得し、局所皮膚被ばくを算出する。この機能を使えば、手技中に皮膚被ばくが1ヵ所に集中した場合など、術者にその情報を与え、アームの向きを変えるなどの提案をすることにより、被ばく障害の発生を抑えていくことができるであろう。被ばく低減を図り、患者に優しい検査を推進していきたい。現在この被ばくレポートは心臓領域に限定されているが、今後は、脳血管内治療、腹部インターベンションの領域にも広げていって欲しい。
今後導入を検討したいもうひとつのシステムとして、透視録画システムが挙げられる。現状はDVD録画装置で透視像を録画しているが、治療後再生することは非常に稀である。理由は目的とする見たい部分を探すことが難しく時間を要し、編集も行えないことから、結果的に単なるバックアップとしての意味合いが強くなっている。 しかし、この最新の透視録画システムは、透視のオン、オフの時にフラグが立てられるため、検索、頭出しが容易であるとともに、このデータをネットワークの各端末に配信することができる。動画編集機能やファイル変換機能も装備されているために、学会発表用の資料作成に威力を発揮すると思われる。
当院では年1回、ライブデモンストレーションを行っているが、それに近い情報を日々の診療の中で入手できるようになれば、学会や研究会で透視の画像を紹介しながら、手技のポイントを解説することにより聴衆に要点を分かりやすく伝えることができ、結果として医療の質の向上につながるのではないだろうか。
 
今回導入したシステムの特長や今後に期待する点などを、思うがままに記述した。そのため、まとまりのない報告となってしまったが、今後システムを更新する際に何かの参考となれば幸いである。

赤澤史生(あかざわ・ふみお)
●71年鹿児島県生まれ。93年九大医療技術短期大学部卒。同年国立療養所田川新生病院採用、94年国立病院九州医療センター職員採用、08年国立病院機構長崎医療センター転勤、CT室主任として現在に至る。10年より放射線部内HIS、RIS、PACS、電子カルテ等システム管理担当。

国立病院機構 長崎医療センター 赤澤史生
国立病院機構 長崎医療センター 赤澤史生

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