導入事例

独立行政法人国立病院機構 九州医療センター様 当院における循環器系動画像ネットワークシステムの特徴
- Photron製サーバ、ワークステーションについて -

独立行政法人国立病院機構 九州医療センター様

独立行政法人国立病院機構 九州医療センターの森先生に執筆いただきました。
RadFan2008年3号からの転載分

導入製品

国立病院機構九州医療センター

当院は1994年(平成6年)に国立福岡中央病院と国立久留米病院が統廃合され、福岡市百道地区に九州一円の循環器疾患の高度救急医療を主たる診療機能として700床の病院としてオープンした。2004年(平成16年)には独立行政法人国立病院機構として再出発し、現在は新入院患者数15,000名/年を超え、平均在院日数13.5日の急性期紹介型病院、高度総合診療施設として運営されている。
当院の循環器領域の診療体制は循環器センターとして統括され、循環器科、腎臓高血圧内科、脳血管内科、心臓外科、血管外科、脳神経外科と血管疾患全般にわたって包括的に整えられている。開院以来循環器センターは心臓カテーテル検査室1室で運営されていたが、患者数増加に伴って、2005年(平成17年)2月に新たに心臓カテーテル検査室が増設された。それを期にフィリップス社製フラットパネルバイプレーンアンギオ装置が増設導入された。設備拡充に伴い、現在は年間1,300件の心臓カテーテル検査、350件の冠動脈インターベンション、60件の末梢血管インターベンション、80件の不整脈カテーテルアブレーションを行っている。

循環器診断治療装置用の動画像サーバ

心血管造影画像は、シネレス化によりデジタルによる画像の保管が必要となっている。CD・DVDなどのメディアに保存を行う場合では、保管場所への移動、持出し手続きや、紛失などの問題がある。サーバによる管理・保管により、移動や探す時間と手続きを軽減し、紛失の可能性をなくすことができる。現在は、大容量で安価なハードディスクドライブの出現、ネットワーク性能の向上などにより、長期間の動画像の保管が可能となった。
サーバへ心血管造影画像を保管する要件としては、データ容量をはじめ、DICOM画像の形式や、閲覧用端末の機能が循環器診断で発生する動画像をストレスなく表示し、再生することに適している必要がある。

循環器動画像ネットワーク

図1
図1

循環器動画像ネットワークの導入において、複数の診断装置からDICOM画像を受信でき、動画像の表示、再生に適しているビューワであること、また、院内各所への画像配信が可能であることを基本に、循環器動画像ネットワーク(図1)を構築した。循環器動画サーバと専用端末を、フォトロン メディカル イメージング社製動画像サーバ「Kada-Serve」と同社製の動画像ビューワ「Kada-View」で構成している。
「Kada-Serve」は、フィリップス社製循環器診断治療装置ALLURA XperFD10/10、東芝社製循環器診断治療装置KXO-80 C/D(フォトロン メディカル イメージング社製「Kada-Gate」を経由)、ボストン・サイエンティフィック社製血管内超音波診断装置Galaxy2、日本光電社製ポリグラフRMC-3000、フィリップス社製超音波診断装置、GE社製超音波装置の画像を蓄積している。

動画像サーバ「Kada-Serve」

「Kada-Serve」のシステムは、DICOM画像の保存用サーバとWindowsMediaVideo形式(以下、「WMV形式」)の画像を院内配信するWebサーバで構成している。DICOM画像の保存用サーバは、システム領域をRAID1によって冗長性を確保し、画像の保存領域をRAID5によって速度、容量、耐障害性の向上を確保している。また、画像の保存領域には、ホット・スペアによる予備のハードディスクを装備することで、ディスクの故障時に自動的にRAIDを再構成することを可能とした。各サーバには無停電電源装置を接続し、電源の瞬断・落雷などによる停電等への対策を講じている。HDDの冗長性以外にも、LTOドライブによるバックアップを行い、データの安全性を十分に確保した。継続的な安定稼動には、リモートメンテナンス回線により、稼働状況の確認のみならず、障害発生時の対応を可能としている。
「Kada-Serve」は、診断装置から受信したDICOM画像からWMV形式の圧縮画像を即時に自動的に作成を行うことができる。WMV形式の画像は、画質の劣化を抑え約6%までの圧縮画像の作成が可能である。DICOM形式による運用期間後にWMV形式への運用に移行することで、サーバのHDD容量を肥大化させずに長期間の運用を行うことが可能となる。圧縮画像によって、ネットワークに負荷をかけないWMV形式を利用することにより、横河電機社製PACSと連携し、院内各所のHIS・RIS等の端末で圧縮画像の参照を簡単に行うことができる。

動画像ビューワ「Kada-View」

「Kada-View」の操作性は非常に快適である。Kadaインターフェース(図2)により、再生、停止、コマ送りはもとより、拡大縮小、移動、フィルタ処理などは、画面上に配置された9つのエリアをマウスでドラッグするだけの簡単操作で実現している。

図2
図2

循環器診断治療装置、血管内超音波装置、超音波診断装置などの動画像を快適に表示することができる。分割画面それぞれに画像を同時に表示し、同期再生も可能である。もちろん、異なる検査や装置の画像を同時に表示することも可能だ。IVUS 画像は、2つのプルバックを同時に表示ができる。長軸像の再構成も行え、1度刻みでできる切断面の指定に合わせて長軸像が同時に更新される。また、短軸像の回転ができるのは、方向合わせに便利である。心機能解析ソフト(Pie Medical Imaging社製CAAS)との連携が可能であり、画像の受け渡しがマウスだけで簡単にできる。

図3
図3

異なる装置の画像を表示する場合など、DICOM画像の情報から装置を判別し、自動的に画像処理調整が行われ、各装置間の画質の違いを一定に保てるのは、調整の手間がなく便利である。DICOM画像はBMP・JPEG・TIFFの静止画、AVI・WMV・MPEG形式の動画に変換でき、指定した範囲、ズームや再生スピードなども反映させた変換や、複数画像を表示した状態をそのまま1つの動画に変換する(図3)こともできるので、学会などのプレゼンテーション用データを簡単に作成できる。
さらに、端末内にサーバから取得したDICOM画像を保存できるので、事前に過去の検査画像を取得することにより、検査中のサーバへ検索する手間を軽減できる。取得したデータは、クリーンアップ機能により、検査数やデータ量、保存期間を指定して自動削除できる。DICOM CDの作成は、ビューワの添付を任意に指定でき、分割作成が可能である。CDを利用する端末にビューワがある場合、自動起動するビューワは、画像を開くまでに時間がかかるので、任意にビューワの添付を指定できると、利用する環境に合わせられるので便利な活用ができる。

サーバへの検索は、患者名、患者ID、検査ID、識別番号などによる検索に加えて、カレンダー検索機能により、マウスの1クリックで指定した検査日の検索ができる。また、ドラッグするだけで検査日の期間指定ができるのも便利である。検索結果はリストで表示され、項目による並べ替えや昇降順の指定もマウスのクリックで指定できる。検査リストから検査を探すことも大変簡単にできる。サーバに静止画を送信する場合には、画像の自動判別による転送確認機能が有効である。静止画だけを送信する際に、アンギオ装置、IVUS装置の動画像などデータ量が大きい動画像データは、転送時に自動で除外することができる。

結語

フォトロン メディカル イメージング社製「Kada-Solution」はクライアントPCの選択(デスクトップ、ノートなど)の自由度が高く、必要に応じた適切なシステムを構築でき、かつ導入コストも低く抑えられる。また、1000BASEのLAN構築を行えば、DICOM データそのままにノートPC 1つであらゆる場所での画像閲覧、レポート作成、プレゼンテーション、患者説明等が行えるなど利便性に富む。さらに、「Kada-View」・「Kada-Serve」の良さは、その卓越した操作性と高速性にある。説明書がなくともストレスなく直感的に操作可能である。また、サポート体制も充実しており、現在導入2年間を経過したが機能には全く不満なく、トラブルの心配もなく使用している。新規導入施設には是非ともお勧めしたい。

独立行政法人国立病院機構 九州医療センター循環器科
森 超夫

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