導入事例

神戸市立医療センター中央市民病院様 循環器領域で使いやすい
動画ネットワークシステムの必要性

神戸市立医療センター中央市民病院様

要旨:当院は、新病院の開院に合わせて画像の統合化を図る目的で、統合画像サーバシステムを導入し事前運用を開始した。しかし、動画を扱う循環器部門においては、統合システムでは満たせない自部門での最適化を考慮し、従来から使用している循環器領域用の動画ネットワークシステムを継続使用することとした。その経緯と有効性について報告する。

神戸市立医療センター中央市民病院 循環器内科 加地修一郎様に執筆いただきました。
月刊新医療2012年1月号からの転載文

導入製品

当院(図1)は、神戸市の基幹病院として、24時間365日市民の皆さんの生命と健康を守ることを使命と考え、地域の医療機関の皆様との連携や役割分担のもと、救急医療・高度医療・急性期医療を重点に担い、「患者様本位の質の高い医療の提供」に努めている。
2011年7月に、旧病院の約1・3km南(神戸市中央区港島南町2丁目)に移転し、新中央市民病院として開院した。新病院は病床数700床、最新鋭の放射線検査・治療機器などを新たに導入し、診療部門としては循環器内科をはじめとする36の診療科がある。さらに、フットケア外来や禁煙外来などの診療科以外の外来、看護部・診療支援部門、教育・医療支援部門、治験・臨床研究、事務部門などから構成されている。

動画ネットワークシステムの導入背景

当院は、06年度に画像のフィルムレス化を図る目的で、テクマトリックス製PACS「SDS」を導入した。それに合わせ動画ネットワークシステムも検討し、循環器系動画ネットワークシステムベンダー数社を比較検討した結果、使い易さを重視してフォトロン メディカル イメージング製(以下、フォトロン)「Kada-Solution」を選択し、運用を開始した。

新病院開院に合わせた統合画像サーバシステムの導入計画

図2 マルチゲートウェイ機能(マルチゲートウェイ機能とは、各装置から受信した画像を複数の転送先へ自在に制御でき、送信先に対応したデータフォーマットに変換し、送信する機能である)
図2 マルチゲートウェイ機能(マルチゲートウェイ機能とは、各装置から受信した画像を複数の転送先へ自在に制御でき、送信先に対応したデータフォーマットに変換し、送信する機能である)

11年7月の新病院開院時に、院内の画像を一元管理することを目的に、統合画像サーバシステムを構築する計画となった。静止画、動画を共に保存管理運用できるシステムベンダーを選考対象とし、結果としてGEヘルスケア・ジャパン社製の「Centricity」を採用することにした。導入時期は、システムが安定稼働した状態で新病院を開院したいという意図から、まずは旧病院にてシステムを構築し、過去データの移植作業を行いながら運用を開始した。
その際、課題となったのは、「Centricity」に画像保存するには、システムの保存条件として非圧縮画像で送信する必要があることである。それまで圧縮(Jpeg Lossless 圧縮)で保存し、読影をしていたため、接続している装置からは、全て圧縮ファイルで送信されている。この課題を解決するため、病院、ベンダー間で検討した結果、既設のフォトロン動画サーバで画像フォーマット変換をして、「Centricity」へ転送(図2)する運用を行うことで解決策を見出すことができた。

動画ネットワークシステムを継続使用

「Centricity」へ運用変更するために、幾度か試用してみたが、操作が不慣れであることも影響してか、やはり動画を扱うには、循環器画像専用の動画ネットワークシステムの方が画像の呼び出しが早いので、循環器部門では、従来通り「Kada-Solution」を使用したいことを病院に相談した結果、診療業務効率を考慮した見地から「Kada-Solution」の継続使用となった。慣れ親しんだシステムが使いやすいことはもちろんだが、画像の呼び出しスピードが速いことは、とても価値のある機能であり、循環器内科医にとって診療効率に大きく影響するところである。患者様へ経過説明の際にも、画像の呼び出しスピードと操作性のよさがとても大事である。

システム構成および運用

図3 循環器動画ネットワーク システム構成図
図3 循環器動画ネットワーク システム構成図

新病院の開院時に、「Kada-Solution」のハードウェア更新を行った。構成(図3)は、動画サーバ、動画ワークステーション(10式)となり、接続している装置は、シーメンス・ジャパン社製血管撮影装置(AXIOM ArtisZee)シーメンス・ジャパン社製CT血管撮影装置(AXIOM Artis dbc)である。心臓用超音波装置に関しては、従来フォトロンの動画サーバに接続していたが、「Centricity」での運用で問題ないと判断し、他の超音波装置と同様に「Centricity」に接続して運用することにした。
動画サーバ(Kada-Serve)の画像保存領域は、RAID5によって冗長性が保たれている。また、ホット・スペアによる予備のハードディスクを装備することで、ディスクの故障時に自動的にRAIDを再構成することを可能とした。電源の瞬断・落雷などによる停電対策のため、無停電電源装置を構築した。
HDDの冗長性以外にも、LTOドライブによるバックアップを行い、データの安全性を十分に確保した。リモートメンテナンス回線により、稼働状況の確認のみならず、障害発生時の対応を可能としている。保存実効容量だが、旧病院で撮影した画像分と導入後5年間保存できる容量を設けるため、10TBのストレージを構築した。
動画ワークステーションは、血管撮影室(2式)、相談講義室(カンファレンス)、エコー室、相談室、医局(3式)、ナースステーション内相談室(2式)に配置している。

DICOM動画ビューワ Kada-View の活用

図4 Kada インターフェース
図4 Kada インターフェース

Kada-View は、ボタンの数が少なくて画面インターフェースがとても分かりやすい。画像の呼び出しは非常に速く、サムネイルをクリックすればすぐに再生できる。画像上に埋め込まれている画像処理コマンド(図4)については、直感的な操作でコントラスト、フィルター調整など画像処理が簡単にできるため、コマンド選択不要でストレスフリーである。検査、治療前に過去の画像を参考にするのに、電子カルテシステム上で操作する「PACSビューワ」よりも動画の再生が細かく調節でき、かつ画質がよいので、詳細な観察ができている。
学会での発表資料で使用したい画像についてもKada-View から簡単にファイル変換できることも大変便利である。

心機能解析ソフトウェア CAAS5

QCA、LVAの解析は、Kada-View 上からPieMedical 社製CAAS5で行っている。解析結果は、Kada-Serve に送信し、検査に追加保存しているため、動画とともに参照できる。

循環器部門ではやはり 専用のネットワークシステムが必要

今回は、当院で使用しているフォトロン製動画ネットワークシステムの活用について述べさせていただいた。
近年、システムの保守管理、コスト面を考慮すると画像サーバの統合化が求められているが、統合画像サーバシステムでは、全体最適化が図れても、各部門で必要とする機能を満たす部門最適を犠牲にせざるを得ない場合がある。循環器部門で扱う画像は、1検査当たり複数のシリーズ画像があり、画像切り換えを容易にできるシステムでないといけない。よって、「餅は餅屋」のたとえ通り、循環器部門では、動画専用のネットワークシステムが必要と考える。今思えば、「Kada-Solution」を継続使用したいことを病院へ相談、熱望して本当によかったと思っている。
今後はさらにKada-View と連携できている循環器レポートシステム(Kada-Report)と電子カルテシステム上で使用できるKada-View Web(Kada-View のWeb版ビューワ)も導入検討したいと考えている。
より安定した循環器系画像検査および画像診断に関する運営を実現し、さらなる診療効率の向上を図るべく、フォトロンには、これからも循環器領域が必要とするシステムの機能向上を図ってもらえるよう期待する。

加地修一郎(かじ・しゅういちろう)
●69年兵庫県生まれ。93年京大医卒。同年から神戸市立中央市民病院に勤務。98年スタンフォード大心臓血管内科客員研究員。00年川崎医科大、03年から神戸市立中央市立病院循環器内科副医長。07年名称変更により神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科医長。現在に至る。

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