導入事例

東大阪市立総合病院様 最適な動画ネットワークシステムの選択と導入
電子カルテ・PACSとの連携を図るために

東大阪市立総合病院様

要旨:当院では、動画ネットワークシステムの更新に当たり、循環器部門と院内の他部門との連携を潤滑に図れるシステムの構築に取り組んだ。その過程と運用方法に関して報告する。

東大阪市立総合病院 循環器内科 市川 稔様に執筆いただきました。
月刊新医療2016年1月号からの転載文

導入製品

当院の位置付けと循環器内科の実績

当院は1998年5月1日に開院し、大阪府東部にあるラグビーの街として有名な東大阪市の中心に位置する。そして、隣接する大阪府立中河内救命センターとも連携し、東大阪市を中心とした中河内地区の地域医療の中核病院として一翼を担ってきた。当院は診療科数23科、病床数547床を有しており、ICU、NICU、緩和病棟など、循環器、脳疾患に対する急性期病院としてだけでなく、がん拠点病院としても稼働している。循環器内科では、現在常勤医が8名であり、24時間体制で日夜診療に取り組んでいる。
2013年度の当科の診療実績(13年4月から14年3月まで)は、心臓血管カテーテル総数は931例。経皮的冠動脈インターベンション(PCI) 299例、末梢血管インターベンション(EVT)39例であった。急性心筋梗塞などの急性冠症候群に対する緊急PCIは61例であった。

循環器専用の動画ネットワークシステムを導入

11年度に院内での電子カルテシステムの導入に伴い、画像システムも一元化する運びとなった。

1. 導入時期

2012年6月

2. 導入背景

以前使用していた動画ネットワークシステムのハードウェアの老朽化に伴い、システムの更新を図る際に、院内の画像を一元管理することを目的に、統合画像サーバシステムの運用を検討した。そこで、当院で使用しているPACSが静止画、動画を共に保存管理できるシステムであったことから、動画専用ネットワークシステムと比較して検討することになった。
結果として、動画を扱うには循環器画像専用の動画ネットワークシステムの方が、画像の呼び出しが早く、循環器部門で必要とする心機能解析およびカテーテルレポートシステムの診療業務の効率化が優れていることを考慮し、従来通り動画ネットワークシステムの導入に至った。フォトロン社を採用した経緯は後ほど述べる。

3. 動画の運用方針

統合画像サーバシステムの機能を生かすために、過去の画像は全てPACSへ移行し、Kada 動画ネットワークシステムへは直近の3年間分移行し、循環器部門専用のスモールサーバシステムを構築した。3年より過去の画像は、PACSを検索して読影している

4. 使用部門

循環器内科、臨床工学科、放射線科

図1 システム構成図
図1 システム構成図

・動画サーバ(保存容量:実効3TB)※保存できるハードディスク容量
・Web配信サーバ:電子カルテシステムへPSP社の画像We bビューワで配信
・カテーテルレポートサーバ(FileMaker サーバソフトウェア)
・バックアップ装置(1式):2次保存の役割、毎晩深夜に当日保存されたファイルをバックアップ
・動画、レポート用クライアント(4式)
・レポート用クライアント(2式)
・動画、レポート用クライアントの設置場所(6ヵ所)(2F:1カテ 血管造影室:デスクトップPC、モニター2面、2カテ 血管造影室:デスクトップPC、モニター1面、内科一般外来:ノートPC、内科外来 第2診察室:ノートPC 8F:北病棟カンファレンス室:デスクトップPC、モニター2面、北病棟ナースステーション:ノートPC)
 
連携しているシステム
・NEC社製 電子カルテシステム:レポート(PDF形式)の連携
・PSP社製 PACS画像転送、レポート通知(PDF形式)

図2 接続装置
図2 接続装置

接続しているモダリティ(図2)
・フィリップス エレクトロニクス ジャパン社製 アンギオ装置:1機
・東芝メディカルシステムズ社製 アンギオ装置:1機
・ボストンサイエンティフィック社製 血管内超音波装置(IVUS):1機
・ボルケーノ・ジャパン社製 血管内超音波装置(IVUS):1機
・セント・ジュード・メディカル社製 光干渉断層法装置(OCT):1機
・ファイバーテック社製 血管内視鏡装置:1機
・日本光電社製 ポリグラフ装置:1機

導入した動画ネットワークシステムの特長

1. DICOM動画サーバKada-Serve の特長

Kada-Serve は、アンギオやIVUS、超音波、CT、MRIなどのDICOMデータを受信し、管理するDICOM動画サーバである。DICOMデータを保存すると同時に、軽量サイズのWindows Media Video(WMV)ファイル形式も自動で作成し、DICOMデータ(原本画像)とWMVデータ(参照画像)の両方で運用できる。それにより、DICOMサーバとしてだけでなく、Webサーバ、マルチゲートウェイサーバ、レポートサーバとしても活用でき、1台4役のコストパフォーマンスを得られる。またKada-Serve にはネットワーク上の端末でKada-View と同等の操作が行える「Kada-ViewWeb」が搭載されている。
Kada-Serve に保存されるWMVデータでHIS/RIS/PACSや電子カルテなどの院内システムとシームレスな連携を実現し、ネットワークに負担をかけずに院内端末のどこからでも動画像を参照・活用することができる

2. DICOM動画ビューワ Kada-View の特長

Kada-View は、アンギオやIVUS、超音波、CT、MRIなどのDICOMデータを快適に表示するためのDICOMビューワである。Kada インターフェースにより、誰でもすぐに使える直観的な操作性が実現された。学会などのプレゼンテーション用のデータ作成に非常に有用であり、画像ネットワーク端末としても、さまざまなサーバシステムとの接続実績があるため、院内ネットワーク用のDICOMビューワとしても、さまざまな場面で多数活用できる。

3. 心機能解析ソフトウェア

PieMedical 社のCAAS 5シリーズでQCA、LVAを有している。CAAS 5はKada-View とシームレスな連携ができる。また、解析した結果は動画サーバ(Kada-Serve)に送信し、検査に追加保存しているため、動画とともに参照できる。

4. 循環器レポートシステム Kada-Report の特長

Kada-Report は、FileMaker をベースとしたカテレポートシステムである。各施設独自のデザイン、フォームを構築することができ、作成したレポート結果は、電子カルテシステム上で閲覧することができる。過去データの移行も可能である。

システム導入のポイント

価格面

導入時に、他社システムと比べて導入費用および保守費用が安かった。バージョンアップ費用も少額であり、そのことも評価のポイントであった。

IVUS画像の読影について(図3)

図3 IVUS画像
図3 IVUS画像

従来のシステムでは、IVUS画像を読影するにはIVUS装置からディスクに保存し、そのディスクから読み取る方法をとっていたため、手間が生じていた。

フォトロン社動画ネットワークシステム導入後は、IVUS 装置から動画サーバへ画像送信でき、ビューワから見たい時すぐに呼び出しできて手間がなく読影できるようになった。

また、Kada-View の機能の特長であるIVUSの長軸像をビューワ上で参照できること、これは通常のIVUSのビューワからでは短軸のみしか参照できない。

また、プレゼン用に必要な部分だけを選択し切り貼りができたり、病変長の計測も可能であることは他のビュ—ワにはなく、非常に重宝している。

カテーテル予定表について(図4)

図4 カテーテル予定表
図4 カテーテル予定表

従来当院での予定表の運用は、予定表用紙に手書きで記入してから院内FAXで通達していたため、急な予定変更に対応ができなかったり、保存の一貫性がないため、情報の信憑性に欠けていた。

また、電子カルテではオペ室の手術予定は確認できても、カテ室の手術(PCI)や検査(CAG、Ao Gなど)は反映できないなど非常に不便であった。

そこでフォトロン社との打ち合わせにより、動画サーバ導入に合わせて予定表の運用の見直しを図り、院内システムで共有できるレポートシステムも兼ねた予定表を構築した。それにより、院内の6ヵ所の端末上で予定表の確認ができるようになり、カテ検査に関わるスタッフとの情報伝達がスムーズに行えるようになった。

レポートのカスタマイズ性(図5)

図5 PCIレポート
図5 PCIレポート

従来は病院で構築したオリジナルのレポートシステムを使用していた。フォトロン社のカテーテルレポートシステムは、前述したように予定表との連携、CAG、PCI、ペースメーカーを含む各種カテーテル検査、治療に必要な入力、印刷フォームを備えていた。

導入前より当院の要求を踏まえフォームのカスタマイズを行ってもらうことにより、当院オリジナルのレポートシステムが構築できた。導入後にも数度にわたり改良を加え、かなり完成度の高い、満足のいくレポートシステムに仕上がった。

血管内視鏡画像の運用について(図6)

図6 血管内視鏡画像
図6 血管内視鏡画像

当院ではカテーテル治療にさまざまなイメージングを用いている。特に血管内視鏡を用いた場合に、患者様へ血管内視鏡の画像を供覧しての病状説明を望んでいた。しかし、当院で使用している血管内視鏡は、動画サーバへ送信する機能を有しておらず、毎回、ディスクに保存する煩雑な方法しかないと諦めていた。そのことをフォトロン社に相談したところ、DICOMゲートウェイ装置と接続することで解決できるとの返事であった。今は、望んでいた診察室、患者説明室でビューワを用いて、患者様への病状説明ができるようになり、大変役立っている。

多様化する循環器領域で有用な動画ネットワークの活用のために

今回、我々は院内の電子カルテ化の導入に伴い、PACSとの連携と循環器独自(カテ室)の動画ネットワークに関する見直しを迫られた。限られた予算内でのさまざまな問題点をどう解決するか、非常に悩んだ。予定表やレポートに関しては、医師だけでなくコメディカルの要望も取り入れて、項目や枠の大きさなど詳細な部分まで改変を要した。しかし、フォトロン社にはかなりの部分で要望を受け入れてもらって、非常に満足のいくものとなった。
 
個々のユーザーニーズに応じてくれるものとして、フォトロン社の動画ネットワークシステムはお勧めできるものと考える。

市川 稔(いちかわ・みのる)
●69年大阪府生まれ。96年広島大医卒。00年大阪大大学院医学研究科卒。同年から03年まで国立大阪病院循環器科、03年から09年まで河内総合病院、同年多根総合病院、10年より東大阪市立総合病院循環器内科、現在に至る。

東大阪市立総合病院 循環器内科 市川 稔
東大阪市立総合病院 循環器内科 市川 稔

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